研究実績の概要 |
本研究では、自然循環による溶融炉心冷却システムとナノ流体による限界熱流束向上そして自然循環流量促進効果を組み合わせることにより無電源による溶融炉心冷却を目指している。2016年度までに、以下に示す本研究の当初の実施事項は全て完了した。ナノ粒子、水そして空気で構成される多相流体の自然循環流量の評価に必要な多相流体のボイド率、圧力損失を評価するモデル作成、試験データと比較する事により多相流体の自然循環量を予測する手法構築、その手法により独自の溶融炉心冷却システムの性能評価。 2017年度は、投稿論文を作成するための追加実験そして投稿を行い、査読を通過し現在掲載待ちである。また、独自の溶融炉心冷却システムの性能評価を含んだ投稿論文の準備を行った。本研究で得られた結果を以下に示す。 ○水-TiO2ナノ流体の質量パーセント濃度0.01~0.5%の領域においては、粘性係数は最大115%程度大きくなる測定結果が得られたが、多相流体の自然循環における流動特性(圧力損失分布、自然循環流量、ボイド率)は水-空気二相流とほぼ大差がなかった.すなわち、ナノ流体も水と同様に自然循環を起こし流動することができ,流路のつまりなどの問題も無く、安定してその現象が起きることがわかった.○本研究で構築した予測手法は、多相流体の自然循環流量を 予測精度(計算値/測定値)の平均値 0.96,標準偏差 0.057で予測できることを明らかにした。○本研究で構築した多相流体自然循環流量予測手法を独自に考案したナノ流体を用いた溶融炉心冷却システムに適用し、従来システムに比較して 最大2倍程度の除熱ができることを明らかにした。 ナノ流体を用いた溶融炉心冷却システムを実用化するためには、模擬試験装置により多相流体を用いた自然循環時の限界熱流束試験が必要である。
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