研究課題/領域番号 |
15K14302
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
一野 祐亮 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (90377812)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 超伝導 / シミュレーション / 磁束量子 / 非対称ピンニングセンター |
研究実績の概要 |
第二種超伝導体中に侵入した磁束量子(Flux Quantum: FQ)の運動は、超伝導体中を流れる電気エネルギーを散逸させる。そのため、超低損失送電ケーブルや大規模風力発電機など高効率超伝導電力機器実現のためには、FQをピン止めする点(Pinning Center: PC)を導入しFQの運動を抑制・制御する必要がある。形状が非対称なPC(アシンメトリックピンニングセンター)を導入すると超伝導体中からのFQ排除や外部からのFQ侵入を抑えることができ、超伝導電力機器の高効率化が期待できる。本研究では、計算機を用いたFQダイナミクスシミュレーションとナノリソグラフ技術を用いた非対称PCの作製・評価技術を融合させることで、超伝導電力機器に対して最適な非対称PCを高速に探索する技術の創製を行う。 本年度は、超伝導現象を記述したTDGL方程式を数値計算で解くシミュレーションコードの開発と大規模計算に向けた計算速度の向上を図った。具体的にはグラフィックプロセッシングユニット(GPU)を用いた並列計算コードの作成を行った。その結果、通常のCPUと比較して2倍程度の高速化が実現された。しかし、GPUメモリの最適化でさらに高速化が期待できるため、次年度はGPUメモリの最適化を行う予定である。また、開発したシミュレーションコードを用いて、円状のPCと三角形状の非対称PCについてFQの運動を数値計算し比較した。結果として、単純な三角形状では非対称なFQ運動が得られなかったため、配置も含めた非対称PCの検討が必要であると考えられる。 実験としては、スパッタ法を用いて良質なNb超伝導薄膜を得るために成膜条件の最適化を行った。その結果、6~7 K程度のTcを持ったNb薄膜を再現性良く得ることができた。また、任意形状のPCを作製するためにナノ電極リソグラフ加工条件の最適化も行った。その結果、直径数百ナノメートルの円盤状PCを任意の場所に配置可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPUを用いた並列計算コードの最適化が十分ではないため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、GPUメモリの最適化による大規模TDGLシミュレーションコードの開発を行う。また、この大規模シミュレーションコードを用いて、実際の試料サイズのシミュレーションモデルや3次元モデルの数値計算を行い、非対称パターンが超伝導特性や磁束量子ダイナミクスに及ぼす影響を明らかにする。実験としては、TDGLシミュレーション結果から得られた非対称パターンでNb薄膜を実際に加工し、数値計算結果との比較検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大規模TDGLシミュレーションコードの開発において、GPUメモリの最適化などコードの開発が不十分であるため、GPU数値計算に特化したワークステーションのなど必要機器の購入を見送ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
GPUを用いた大規模シミュレーションに特化したワークステーションを導入し、研究を効率的に遂行する。
|