研究課題
第二種超伝導体中に侵入した磁束量子(Flux Quantum: FQ)の運動は、超伝導体中を流れる電気エネルギーを散逸させる。そのため、超低損失送電ケーブルや大規模風力発電機など高効率超伝導電力機器実現のためには、FQ をピン止めする点(Pinning Center: PC)を導入しFQ の運動を抑制・制御する必要がある。本研究では、計算機を用いたFQ ダイナミクスシミュレーションとナノリソグラフ技術を用いた非対称PC の作製・評価技術を融合させることで、超伝導電力機器に対して最適な非対称PC を高速に探索する技術の創製を試みた。スパッタ法を用いてNb超伝導薄膜をガラス基板上に作製し、ナノ電極リソグラフ加工技術を用いてNb薄膜表面を酸化させることで円形ナノパターンの作製を行った。その結果、円形ナノパターンによるFQ運動のピン止めによって臨界電流密度(Jc)が向上した。また、円形ナノパターンの数密度が多くなるほどJcが向上する傾向が見られた。二次元空間において様々な形状の非対称PCを含んだ超伝導体モデルを用いて、FQダイナミクスシミュレーションを行った。その結果、超伝導体の片側に剣山状の切れ込みを入れる加工を施したモデルにおいて、I-V曲線が原点に対して点対称にならない、非対称な挙動が観られた。これは、FQが運動方向(ローレンツ力の向き)によって異なる運動をしたためである。次に上記のシミュレーションを三次元空間に拡張し、印加電流と外部磁場が平行な「縦磁場状態」におけるシミュレーションを行った。その結果、電流によって生じる自己磁場によってFQが歪むことでローレンツ力が働き、FQはスパイラル状に運動することがわかった。また、様々な形状のPCを導入したモデルで同様のシミュレーションを行った結果、粒状PCが最も効率よく縦磁場状態におけるFQをピン止めできることがわかった。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 10件)
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