研究課題
本研究は全神経回路が記載されている線虫をモデルに用いて自由行動中の神経活動を可視化・解析することにより、自発行動発現に関わる神経回路を明らかにすることを目的としている。線虫は主に前進運動で餌を探索するが、時折自発的に後退運動あるいは深い屈曲運動を行い進行方向を変えることが知られている。今回、自発的な後退運動に関わる神経回路機能を明らかにするため自由行動下における脳活動の長期可視化を行った。動く動物の神経活動をリアルタイムで可視化するため本研究で新しいイメージングシステムICaSTを開発した。ICaSTは自動追尾装置と高速スキャンレーザー顕微鏡を統合しており、線虫の体の任意の領域を自動追尾しながら神経シグナルを高倍率で長時間イメージングすることが可能になった。また、高輝度・高感度な新しいカルシウムプローブを線虫神経系に適用し、新たな遺伝子改変動物を作成した。これらの動物の自発的行動と頭部神経節(脳)の神経細胞のカルシウム動態をICaSTで同時記録し定量的に解析した。我々はこれまで自発的な後退運動開始前に先行して活動するドーパミンニューロンを同定しているが、今回さらに前進・後退運動のスイッチングでカルシウムシグナルが顕著に変動するいくつかの神経細胞を同定した。その中で後退運動のスイッチングに伴う特定の神経の顕著な活動抑制に着目した。活動抑制の神経基盤と上位ニューロンとの関わりを明らかにするため、抑制性神経伝達物質の変異体を用いて体系的なイメージング解析を行いモノアミンのextrasynapticな作用が重要であることを見出した。今後は行動と神経活動の因果関係を明らかにするため特定の神経活動を制御する光遺伝学的アプローチを行う必要があると考えられる。
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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