研究実績の概要 |
リッキング課題やレバー引き課題を実行中のマウスにおいて、2光子カルシウムイメージングにより小脳プルキンエ細胞集団の活動を解析した。小脳帯域を可視化できるマウス(Aldoc-tdTomato, Tsutsumi et al., J Neurosci. 2015)のプルキンエ細胞に、高感度カルシウムセンサーGCaMP6を発現し、課題の学習過程において同じ細胞集団から繰り返しの慢性イメージングを行った。今年度は、この方法を用いて音弁別go/no-go課題を実行中に登上線維シグナルが課題のどのような情報をコードしそれが学習過程でどのように変化するかに着目して解析を行った。その結果、課題に関する異なる情報(リッキング開始のタイミング、運動誤差の情報)が小脳の異なる帯域に登上線維シグナルとして与えられていることが明らかとなった。すなわち、それぞれの機能に関する小脳領域は異なっており別々の機能モジュールとして働いており、運動タイミングと誤差信号は別のモジュールで処理されていることを意味している。さらに、手がかり刺激(go/no-goキュー)の情報や、行動表出(Hit, Miss, Correct rejection, False alarm)の情報を受けているモジュールがあることが明らかとなり、小脳において高次機能に関わる細胞集団を初めて同定することに成功した。また、学習に伴ってこれらの運動や認知機能にかかわるシグナルが変化することが明らかとなり、各小脳モジュールにおいて同時に複数の異なる情報処理が行われて最終的な行動学習が成立することが示唆された。また、レバー引き運動課題を遂行中の小脳活動イメージングにも成功しており現在データ解析中である。
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