研究課題
以下の4項目を実施した。(1)細胞内記録用ヘッドステージの設計・開発:細胞内記録による神経細胞の閾値以下の微弱な電位変化計測に必要なヘッドステージ電子回路の設計および回路基板の開発を行った。さらに安定して電流固定(current clamp)ができることを確認した。(2)マイクロドライブの設計・開発:モデル動物の行動を阻害することなくガラス電極の位置を遠隔操作するために超小型モーターによるアクチュエーターを搭載したマイクロドライブの設計、開発を行った。小型軽量で細胞内記録が可能な精密な電極操作を実現するために、3Dプリンターにより作成した。(3)コミュテーターの設計・開発:動物頭部に設置したデバイスと電気生理機器およびモーター制御機器を接続するケーブルが過度にねじれて動物の行動を阻害しないように、コミュテーターを設計、開発した。ケーブルのねじれを感知するセンサーを設置し、ねじれが解消するように自動的に機器側のケーブル端子が回転する機構を実現した。(4)遺伝子導入実験の条件検討:大脳皮質、基底核での光遺伝学操作のために、ウイルスベクターおよびin utero電気的遺伝子導入法の条件検討を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
自由行動下での細胞内記録技術については、当初想定した性能を達成することができた。研究代表者等は、本研究と並行して別プロジェクトで内視顕微鏡によるイメージング技術の開発を行っているが、本細胞内記録技術で開発したマイクロドライブを応用することにより、同イメージングにおいても自由行動下で計測可能とする技術に発展することができた。したがって、本研究を推進することにより、他の研究プロジェクト推進にも資する研究成果をあげることができたと言える。
以下の2点を実施する。(1)細胞内記録用のopto-electrodeの設計・開発:光ファイバーの先端を加工し、ガラス電極内に刺入し固定する。電極と光刺激 光源が近接するため、ベクレル効果(Becquerel effect)等のアーティファクトが生じないように遮光コーティングなどの条件を検討する。チャネルロドプシンを発現するトランスジェニックマウス等の脳スライス上で、opto-electrodeによる標的細胞特異的な細胞内記録の予備実験を行い、閾値以下の光刺激応答とシナプス電位が識別できるか検証する。(2)超小型細胞内記録システムとopto-electrodeの統合:opto-electrodeを超小型細胞内記録システムに装着し、実際に生体での神経活動計測を行う。光ファイバーが電気生理用のケーブルと干渉するようであれば、光源として小型LEDをマイクロドライブに直接搭載することも考慮する。マウスを使った実験では、トランスジェニックマウスに加えて、研究代表者らが開発したウイルスベクターによりチャネルロドプシン、ハロロドプシンを発現させる。ソングバードにおいては、研究代表者らが開発した鳥類選択的かつ高効率に遺伝子導入可能な鳥類選択的アデノ随伴ウイルスベクター(Matsui et al., PLoS ONE 2012)によりこれらの光駆動性タンパク遺伝子の導入を行う。
ヘッドステージの設計およびマイクロドライブの設計が順調に進み、当初想定した試作に必要となる部品費を削減することができた。一方、次年度使用額が生じることにより、次年度に予定している光遺伝学操作の条件検討をさらに綿密に実施することが可能となり、本研究をより効率よく実施できるため。
光遺伝学的操作に適したウイルスベクターコンストラクトの作成、トランスジェニックマウス系統の購入・維持に費用をあて、光遺伝学操作の条件検討をさらに綿密に実施する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
巻: 112 ページ: 7599-7604
10.1073/pnas.1413484112
Neuroscience
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10.1016/j.neuroscience.2015.09.014