研究課題/領域番号 |
15K14319
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 泰丈 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00343252)
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研究分担者 |
岡 雄一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30614432)
猪口 徳一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60509305)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質翻訳 / イメージング / 脳・神経 |
研究実績の概要 |
リボゾームが停止コドンを認識したときに起きる分子間反応を利用することにより、特定のmRNA上で起きる翻訳を可視化する新たな翻訳検出系を構築する目的で、reporter mRNAとFRETプローブの作製をおこなった。reporter mRNAは線維芽細胞の伸長端に局在するbeta-actin mRNAを利用し、beta-actinの終止コドンの3'側にbox B配列を挿入したbeta-actin-BoxB mRNAを発現するベクターを作製した。また、FRET反応を観察するための蛍光タンパク質であるCFP、YFPをUpf1と翻訳停止因子eRF3にそれぞれ付加したベクターを作製した。Upf1-YFPにはさらにBoxB領域に結合するλN配列を付加することにより、reporter mRNAとBoxB-λN間のRNA-タンパク質相互作用を介してUpf1-YFPが結合できるように設計した。以上、reporter mRNAを発現するベクターであるbeta-actin、FRETプローブを発現するCFP-eRF3、λN-Upf1-YFPの3種類のベクターを作製した。ベクターは培養細胞発現用としてアデノウイルスベクターを基にクローニングを行った。さらに神経細胞に発現させる目的でアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターへのクローニングをおこない、ウイルス粒子を得ることができた。beta-actin-BoxB mRNA、CFP-eRF3タンパク質、λN-Upf1-YFPタンパク質を発現するアデノウイルス線維芽細胞に感染させて、ライゼートを回収し分光蛍光光度計により吸収波長のYFP/CFP比率を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各FRET解析用の蛍光プローブを発現させるベクター、またreporter mRNAを発現するためのベクターのコンストラクションは終了し、アデノウイルスにより線維芽細胞に発現させることが可能である。さらに高い力価を有するウイルス粒子を得る目的で、継代し、濃縮することにより、感染から12時間で可視化レベルにまでFRETプローブを発現させることが可能となっている。また、分光蛍光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、430nmのCFP励起波長により、530nm付近のYFPの吸収波長のピークを検出することができた。これはCFP-eRF3、λN-Upf1-YFP間のFRETが起きていることを示しており、reporter mRNA非存在下ではこのようなピークは確認できないことから、これら2つのプローブのランダムな相互作用を検出していないと考えられた。以上よりreporter mRNA上でおきる翻訳を検出する系の基盤が確立できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記のFRET反応が翻訳の動きに応じて変動するのかどうかを確認する。翻訳を阻害する薬剤であるcyclohexamide、anisomycinなどの薬剤でYFP/CFP比の上昇が阻害されるか、また無血清培地で培養した線維芽細胞に様々な成長因子を添加したときのFRET反応を解析することにより予想される翻訳の動きとFRET反応の変化が一致するかを確認する。翻訳の動きを反映していることを確認することができたなら、神経細胞への発現をおこないNMDA、BDNFを培養上清に投与しFRET反応を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種クローニングに要するDNAプライマーの設計が無駄なく進みDNA合成にかかる費用を圧縮できた。さらに、安価で効率的にウイルスを濃縮するプロトコールを用いたことにより、当初ウイルス粒子の濃縮に使用する予定であった超遠心に要する各種機材を使用することなく実験を遂行することができた。以上のことから、予定外に支出を抑えることが可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はマウスの神経細胞を用いた実験を行う必要があるため、動物の購入と維持に充てる予定である。
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