研究課題/領域番号 |
15K14321
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
坂場 武史 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (80609511)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シナプス / 生理学 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
シナプス前終末からの伝達物質放出機構を明らかにするためには、電気生理学的な方法だけでなく、イメージングによって終末内でのシナプス小胞や機能分子の個々の動態を明らかにすることが求められている。本年度は、単一シナプス小胞の動態を測定するために、全反射蛍光顕微鏡を脳幹聴覚系伝導路calyx of Held大型シナプス前終末に適用することを試みた。 シナプス前終末を急性単離することが可能することになり、シナプス前終末をガラス面に接着することで全反射蛍光顕微鏡の適用が可能になった。シナプス小胞に対して蛍光色素FM1-43を取り込ませることで可視化した。シナプス前終末にパッチクランプ法を適用し、膜電位固定下、前終末Ca電流の制御をしながら、Ca流入量と開口放出の関係を測定した。また、終末全体での開口放出量の測定をおこなう膜容量測定法を使って、単一小胞観察の妥当性を確認した。さらに、パッチ電極を介してCa指示薬やケイジドCaを導入し、光でこれを解離して終末内Caを一様に上昇させ、終末全体で上昇したCa濃度と単一小胞レベルの開口放出速度との連関を定量することが可能になった。このような試みは、哺乳類シナプス前終末では初めてのことである。 本方法でシナプス小胞の動態を観察した結果、持続的な刺激中の開口放出速度は小胞の伝達物質放出部位への動員ではなく、既に伝達物質放出部位に動員された小胞が分子的に開口放出可能な状態に準備される分子プライミング過程が律速となることが明らかになった。この結果は論文として今年度公刊した(Midorikawa and Sakaba, 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究申請時に目標としていた単一シナプス小胞のイメージングが27年度に可能になり、次の段階(伝達物質放出機構や機能分子の可視化、小胞イメージングの精度の向上)へと研究を進める段階になっているため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、伝達物質放出機構・機能分子の可視化、シナプス小胞イメージング精度の向上、他の顕微鏡技術の適用、といった技術的な水準の向上、カリックス型シナプス以外の標本への適用の試行などによって、本研究で使われる方法の汎用性を向上させたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新しい備品を購入せずに現有設備を使用して実験が可能であったこと、消耗品の使用を極力節約して無駄を減らしたこと、シナプス小胞可視化の蛍光プローブとしてFM1-43を用いることで済み高額なプローブの必要がなかったこと、を主とした理由として次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、自作で新規に全反射蛍光顕微鏡を構築しており次年度以降そのために使用すること、また、新たな標本への本研究計画での技法の適用や、シナプス小胞や機能分子の効率よい可視化ができる蛍光プローブの購入のために使用したいと考えている。
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