研究実績の概要 |
平成29年度に関して:本年度は、ラット海馬苔状線維シナプス前終末を単離し、シナプス前終末におけるシナプス小胞の動態を全反射蛍光顕微鏡でモニターすることを試みた。基本的な特性はすでに同様の研究が進んでいる(Midorikawa and Sakaba, 2015, Neuron)calyx of Heldシナプス前終末と同様であったが、形質膜融合の速度がcalyx of Heldより顕著に遅かった。cAMP/PKAの活性化に伴って、形質膜融合の速度が速くなり、calyx of Heldとの差が小さくなった。この成果は論文として公刊した(Midorikawa and Sakaba, 2017, Neuron)。
3年間を通して、全反射蛍光顕微鏡を用いてシナプス前終末におけるシナプス小胞の動態を解析する技術を開発する目標に沿って研究を進めた。このような研究はキンギョ網膜双極細胞などにこれまでの研究では限られており、ほ乳類神経細胞での研究はほとんどなかった。2015年度はラット聴覚系脳幹のcalyx of Heldシナプス前終末を急性単離し、シナプス小胞の動態を解析することに成功した(Midorikawa and Sakaba, 2015)。その後、よりダイナミックな神経シナプス可塑性を持つ海馬苔状線維シナプス前終末で同様の研究を行い、今年度論文公刊をした。今後は、イメージング技術、蛍光プローブのさらなる工夫を行い、より精度の高い実験を行っていくこと、異なった標本の小胞動態を比較し、伝達物質放出、シナプス伝達の共通性、多様性のメカニズムを解明していくことが課題となろう。
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