研究課題
神経細胞は分化したタイミング(誕生日)によって異なる形質を持つ。したがって、神経細胞に誕生日のタグづけができれば、誕生日が規定する神経細胞のサブセットやサブ回路特異的に実験操作を加える事が可能になる。申請者は、神経細胞の誕生日依存的に遺伝子組換えを誘導できるシステムを考案した。神経運命決定に働く遺伝子の中には、神経細胞誕生直後に「一過的」に発現するものがいくつか知られている。これらの遺伝子群のエンハンサーを利用して、タモキシフェン依存型Cre組換え酵素(CreER)の発現を駆動するトランスジェニックマウスを作出した。これらのマウスにタモキシフェン投与すると、最終分裂を終えたばかりの神経細胞特異的に、loxP配列組換えをパルス誘導できる。異なる遺伝子エンハンサーを用いて作成した多系統の中から、強力に誕生日依存的組換えを誘導できる5系統を既に絞り込んでいる。各々の系統は,組換え酵素の発現領域の違いから得意とする神経領域が異なり、研究目的に応じて使い分けが可能である。本研究では、この開発段階にある誕生日タグづけシステムの整備を進め、神経科学研究に使いやすいようにリソース化する。具体的には、各系統ごと、誕生日ごとに、組換えタグされた神経細胞の画像データを取得して、データベースを作成する。興味をもつ研究者が、自分自身の目的に使える系統を簡便に検索できるようにオープンデータカタログとしての整備を進める。「誕生日」という神経細胞の新しい分類法に基づく本手法は、神経科学研究の新しい有用なツールとして重宝されるはずである。
1: 当初の計画以上に進展している
トランスジェニックマウス4系統については、1日刻みでタモキシフェン注入を行って標本作成と染色を行い、以下の項目について解析した。1) ホールマウント脳標本による誕生日タグづけされた細胞の分布2) 脳連続切片標本による誕生日タグづけされた神経細胞体の空間分布3) 脳連続切片標本による誕生日タグづけされた神経細胞の軸索投射パターンすでに8割以上の解析は終了しており、極めて順調に研究は進行している。残りのトランスジェニックマウス1系統については、おそらく遺伝子挿入による影響のため健康状態が悪く、産仔数が少ないため解析が遅れぎみである。
1)昨年度の作業を継続して遂行し、各系統のすべての誕生日の脳標本と切片標本の作成と染色を完了する。2)標本をすべて画像データ化する。自動画像取得機器を利用して、効率的に多くの画像を取得する。3)画像データを整理してデータベース化を進める。
人件費で残業等を見込んでおり差額が生じた。
次年度の人件費として使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Cerebral Cortex
巻: 25 ページ: 4111-4125
doi: 10.1093/cercor/bhu129
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 112 ページ: E4985-4994
doi: 10.1073/pnas.1420701112.