研究実績の概要 |
神経細胞は分化したタイミング(誕生日)によって異なる形質を持つ。したがって、神経細胞に誕生日のタグづけができれば、誕生日が規定する神経細胞のサブセットやサブ回路特異的に実験操作を加える事が可能になる。本研究では、神経細胞の誕生日依存的に遺伝子組換えを誘導できるシステムを考案した。神経運命決定に働く遺伝子の中には、神経細胞誕生直後に「一過的」に発現するものがいくつか知られている。これらの遺伝子群のエンハンサーを利用して、タモキシフェン依存型Cre組換え酵素(CreER)の発現を駆動するトランスジェニックマウスを作出した。これらのマウスにタモキシフェン投与すると、最終分裂を終えたばかりの神経細胞特異的に、loxP配列組換えをパルス誘導できる。 本研究では、神経分化後一過的に発現する遺伝子としてNerogenin1, Neurogenin2, NeuroD1, NeuroD4の4つ選び、各遺伝子について複数個のゲノムBACクローンを用いて合計23系統のトランスジェニックマウスを作出した。得られたマウス系統を、それぞれ全てloxP-STOP配列をもつレポーター系統と交配して、タモキシフェン投与により、遺伝子組換えが誘導されるものを検索した。ほとんどの系統に置いてタモキシフェン依存的遺伝子組換えが誘導されたが、組換え効率と組換え神経細胞の脳内分布を詳細に解析した結果、使用したエンハンサーごとに特に有用な4系統G1C, G2A, D1B, D4Aを選抜した。各々の系統は,組換え酵素の発現領域の違いから得意とする神経領域が異なり、研究目的に応じて使い分けが可能である。
|