研究課題/領域番号 |
15K14326
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩井 陽一 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (40332332)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グリア光遺伝学 / G蛋白質共役型受容体(GPCR) / アストロサイト / グリア-ニューロン相互作用 / 情動 |
研究実績の概要 |
アストロサイトはGq、GsおよびGi/o型のG蛋白質共役型受容体(GPCR)を発現し、情動に関わる神経調節物質に応答する。情動におけるアストロサイトのGPCRシグナルの役割を直接的に検証するために、今年度はアストロサイト特異的にGPCR群を光活性化できる系の確立(1)および行動試験中のアストロサイトGPCRシグナルの光活性化(2)を行った。 1.光感受性をもつGs型GPCR(OptoGs)をアストロサイト選択的に発現するトランスジェニック(TG)マウスを3系統樹立した。麻酔下で青色LEDを照射したところ、OptoGs陽性のアストロサイトでCa2+の上昇が観察された。このCa2+上昇のタイミングは、OptoGq TGマウスで光誘発されるCa2+上昇より遅れていることから、それぞれのTGマウスで異なるシグナル経路が活性化されていることが示唆された。また、アストロサイトのGqおよびGsシグナルの光活性化によって、周辺のニューロンの活動が変化することを見出した。現在、薬理学的にアストロサイトGPCRシグナルの下流の分子基盤を探索している。 OptoGs TGマウスの繁殖が容易でないことが分かった。現在、異なるコンストラクトを用いて、OptoGsあるいはOptoGi/oの発現を時期・細胞特異的に制御できるTGマウスの作製を進めている。 2.自由行動下でOptoGq TGマウスの前頭前皮質を経頭蓋LED照射し、条件付け場所嗜好性試験を行った。照射条件によって場所嗜好性が変化することが示唆された。また、オープンフィールド試験において、OptoGqの光活性化によって行動が変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同じプロモーターを用いて作製したOptoGq TGマウスと比べて、OptoGs TGマウスの繁殖は容易でなく、大半のファウンダーマウスから子孫が得られなかった。ファウンダーマウスの作製の規模を増やすことで、アストロサイト選択的に発現するTGマウスを3系統樹立した。並行して、時期および細胞種特異的に発現を誘導できる別の系を導入した。
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイトのGqあるいはGsシグナルを光活性化できるTGマウスを用いて、in vivoおよびスライス標本から電気生理学実験を行い、各GPCRシグナルの光活性化に伴う神経活動の変化を調べる。各シグナルの下流の分子機構を薬理学的および生化学的に調べ、アストロサイトから細胞外に分泌される分子の同定を目指す。OptoGsあるいはOptoGi/oを時期特異的に発現誘導できるTGマウスの作製も進める。 各TGマウス群に対して光遺伝学的行動実験を行い、各シグナルの情動行動に及ぼす影響を調べる。さらに、各シグナルの下流分子機構を薬理学的および遺伝学的に操作して、情動行動への関与を追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
OptoGs TGマウスの繁殖が容易でなく、大半のファウンダーマウスから子孫が得られず、行動実験、電気生理学実験および薬理学実験に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、行動実験機器、電気生理学実験機器および薬剤の購入に使用する。
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