研究課題/領域番号 |
15K14327
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤本 聡志 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (50586592)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経科学 / 神経回路形成 / 自発神経活動 / 嗅球 / 樹状突起 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究により、自発神経発火のパターンの変化と樹状突起の刈り込みについて相関が示唆されるデータが得られているものの、因果関係は不明であった。本年度は、自発神経発火のパターンと樹状突起刈り込みの因果関係とメカニズムについて精査するため、1)自発神経活動の時間パターンと「勝者」となる樹状突起の空間パターンの同時測定。2)光遺伝学的手法を用いた神経活動の時間パターン操作と「勝者」となる樹状突起の選択。3)カルシウムシグナルの下流で主樹状突起の「勝者」「敗者」を決める分子機構、の3項目について研究計画を立て、実験を行った。1)については、2色同時測定のための顕微鏡整備及び、形態観察用の蛍光プローブおよびカルシウム蛍光プローブの組み合わせについて検討を行い、概ねデータ取得のための体制を整えた。2)については、チャネルロドプシンを用いた光照射依存的な神経刺激の条件検討を行った。3)についてはCrispr/Cas9システムを組み込んだベクターの設計を設計し表現型がわかっている既知遺伝子のノックアウトを行い、実験系が機能していることを確認した。また、樹状突起の刈り込みに関わることが予想される複数の遺伝子候補に対してgRNA発現ベクターの設計を行った。また、当初の計画とは方向性が異なるが、樹状突起の刈り込みを終えた糸球体においても、GABA-A受容体のアンタゴニストを薬理学的に作用させると糸球体固有の非同期的な自発神経活動パターンが同期することを見出した。このことは自発神経活動のパターン変化に抑制性回路が関与することを示唆しており今後さらに研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げていた分子機構については、Crispr/Cas9システムを組み込んだベクターの設計にとどまったが、発達とともに起こる嗅球の自発神経発火のパターンの変化にGABA作動性の抑制性インターニューロンが関与する可能性を示す薬理学的なデータが得られた。当初の計画とは異なる方向性ではあるが神経活動のパターン変化を制御する因子として抑制回路が関与する可能性を示す進展があったため、総合的にみておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内分子機構については、引き続き設計したCrispr/Cas9システムベクターを子宮内エレクトロポレーション法にて僧帽細胞に導入することにより、樹状突起の刈り込みを制御する細胞内分子機構を明らかにする。また、抑制性回路の発達と僧帽細胞の樹状突起刈り込みとの因果関係を明らかにするために、GABAの産生を抑制したマウスの解析や特定の抑制性インターニューロンのシナプス伝達を遮断したマウス等を用いて解析を行う。同時に、光遺伝学的手法を用いて人為的なパターン変化を引き起こした時に樹状突起刈り込みにどのような変化が現れるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿を行い査読者コメントに対応する実験を設計する過程において、本研究課題の成果を最大化するために、当初計画していた実験に加えて新たな実験を行う必要が出てきたため。
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次年度使用額の使用計画 |
抑制性回路機能を減弱したマウスの解析および赤色カルシウムプローブとチャネルロドプシン発現マウスを組み合わせて神経活動パターンの操作と樹状突起刈り込みの測定を行う。そのための消耗品費用として使用する。
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