前年度までに、生後発達期における嗅球の自発神経発火のパターンの変化と僧帽細胞の樹状突起の刈り込みについての相関を示唆するデータや薬理学的実験から抑制性回路の関与を示唆するデータが得られていた。そこで本年度は、抑制性回路の発達と僧帽細胞の樹状突起刈り込みとの因果関係を明らかにするために、GABAの産生を抑制したマウスを用いて解析を行った。GABAの産生を抑制したマウスでは、発火パターン変化のタイミングと刈り込みともに遅れが生じることを見出しが、その表現型は限定的であった。引き続き、特定の抑制性インターニューロンからのシナプス伝達を遮断したマウス等を用いてさらに解析を進める。樹状突起の刈り込みを制御する細胞内分子機構については、LTP、LTD関連遺伝子に対するCRISPR/Cas9システムベクターを子宮内エレクトロポレーション法にて僧帽細胞に導入し、細胞単位で遺伝子をノックアウトする実験を行い、ノックアウトによって樹状突起刈り込みに異常が起こる遺伝子をいくつか同定できた。これらの遺伝子と神経活動との関係性を明らかにしていくことが今後の課題である。また僧帽細胞にChR2を発現した新生仔マウスの嗅球直上にLEDを取り付け、人工哺乳しつつ糸球体間に同期的な光刺激を与える実験系を確立した。
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