現在、神経回路の詳細な構造を明らかにするコネクトミクスのアプローチが着目されているが、脳の動作原理を理解するには、回路構造と機能を同一個体で包括的に明らかにすることが重要である。そこで、本研究では神経細胞の機能・細胞種・回路を同一個体の脳で統合的に理解する為の方法の確立を目指した。具体的には、カルシウムイメージングなどを行った脳組織に対して、3次元的な構造を保ったまま抗体等で染色し、さらに透明化を行ってメゾスケールのコネクトームを明らかにするという流れが有望であると考えた。そこで、本研究では、新しい透明化法SeeDB2を開発し、深部の抗体染色を行いつつ、形態を最大限保持し、高解像イメージングすることを目指した。比較的高濃度のサポニンを使うことで、形態に影響を与えることなく深部(約200um)の抗体染色が可能になることを見出した。さらに熱処理を加えると1mm程度の深さまで抗体染色が可能になった。GFPの他、Gad67やPVなど、ニューロンのサブタイプ同定にも成功した。また、透明化に関しては、イオヘキソールをもちいて屈折率をグリセリンまたはオイルといったイマージョン液と一致させることにより、深部まで高解像イメージングを実現した。実際に超解像顕微鏡やAiryscanを用いて、神経細胞をシナプスレベルで3D計測することに成功した。これらの新しい方法論は神経回路の包括的計測に道を拓くと期待される。
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