研究課題
厳密な細胞分画実験と免疫染色実験 により、AUTS2 蛋白質が神経細胞の核だけでなく、細胞質領域、特に神経突起部分に も多く存在することを見いだした。次に、細胞生物学的、生化学的実験により、AUTS2 蛋白質が神経細胞の細胞質において、P-Rex1およびElmo2/Dock180複合体と相互作用することにより、低分子量 G 蛋白質の一つである Rac1 を活性化させ、ラメリポディアという特殊な網目状アクチン構造を誘導することを見いだした。また反対に AUTS2 蛋白質は、Intersectin 1および2と相互作用することによって低分子量 G 蛋白質の一つである Cdc42 を不活性化し、フィロポディアという特殊な 糸状アクチン構造の形成を妨げることがわかった。さらに我々は、脳発達における AUTS2 の機能を調べるために、ノックダウン法や ノックアウト法を用いて、マウス個体における AUTS2 遺伝子の機能を阻害した。すると神経細胞の移動が障害され、神経突起の伸長と分岐が妨げられることがわかった。すなわち、AUTS2 は、脳発達における神経細胞の移動と神経突起の伸長・分 岐を促進することによって、正常な脳神経ネットワークの構築に関わっていることが明らかになった。また、これらの異常は「細胞質にしか局在できないように改変 した AUTS2 蛋白質」を導入することによって解消できたことから、これまでの定説と は異なり、「細胞質で働くAUTS2 蛋白質」こそが脳神経ネットワークの構築に重要で あることが証明された。残念ながら、限局性皮質異形成症とAUTS2遺伝子のゲノム変異との関連については、見いだすことができなかった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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