研究課題
P301S変異型タウを発現する遺伝子改変マウス(PS19マウス)は、タウオパチー発症初期(生後6ヶ月齢以後)には主に脳幹および脊髄に、後期(生後9ヶ月齢以後)には大脳皮質、嗅内野および海馬にタウ病理が拡大するモデルである。本モデルにおいて加齢に伴うタウ病理形成に与える神経毒物DSP-4投与の影響を解析した。薬物投与1ヶ月後には、薬物無投与の対照と比較して、大脳皮質、嗅内野および海馬においてノルアドレナリン量の著しい低下が確認されたがドーパミンおよびセロトニン量の顕著な変化はみられなかった。この結果は、薬物投与によるノルアドレナリン量の顕著な低下が、青斑核ニューロンが投射する大脳皮質、嗅内野および海馬におけるシナプスにおけるノルアドレナリンの取り込み、あるいは青斑核ニューロンにおけるノルアドレナリン合成の抑制によるものと考えられた。さらに、リン酸化依存性および非依存性タウ抗体等を用いた免疫組織化学的および生化学的解析から生後7ヶ月齢には脊髄および脳幹に加え、大脳皮質、嗅内野および海馬にもA68およびAT8陽性タウ封入体が確認され、また炎症マーカーの発現にも違いがみられた。これらの結果から、脳幹および脊髄と比べより軽度なタウ病理を呈する本モデルの大脳皮質、嗅内野および海馬領域におけるノルアドレナリンの低下が、これらの領域においてタウ病理形成を促進することを明らかにした。細胞外タウが細胞内タウに比べ、より高分子量であるオリゴマーを含むこと、C末端領域内およびタウの微小管結合部位内にエピトープをもつ抗体の反応性が異なることを明らかにし、上記の抗体の反応性の比較による脳抽出物内のタウの性質の解析法を構築した。今後、上記薬物投与より誘導されるタウ病理拡大の促進する機構が本手法により解明されることが期待できる。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 19 ページ: 891
10.3390/ijms19030891