研究課題
生物は様々な状況で恐怖や不安を覚える。この際の身体反応は正常な生体防御反応であるが、過度な反応により、社会生活に支障をきたすとされる。本研究では、個体の不安状態に影響を与えるとされる分界条床核(BNST)に焦点を当て、その局所回路の動作基盤を、独自に見出した分子マーカーを手掛かりに明らかとすることを目指す。そのために、(1)分界条床核の神経活動を計測する方法の開発、(2)分界条床核局所回路の解剖学的検討、(3)見出された分子マーカーによって分離される細胞群の機能 についての研究を推進する。各研究項目についての今年度の研究実績は下記のとおりである(1)分界条床核の神経活動を可視化する方法の開発:ウイルスベクターとcreトドライバー系統を用いて、蛍光たんぱく質の分界条床核の特定神経細胞における発現を確認した。(2)ウイルス性トレーサーを用いて、各分子マーカーによって標識される細胞群がどのような局所回路を構成しているのか、検討を行った。(3)分子マーカーによって標識される細胞群の活動を変化させた際に、恐怖記憶に対して影響を与える可能性を、マウス行動モデルを用いて明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
上記研究項目(1)-(3)について進展があり、遺伝子改変動物やウイルスベクターの整備が順調に推進された。
今後は、整備を進めた、遺伝子改変動物やウイルスベクターを用いて、特に(1)(3)についての研究を推進する。(1)分界条床核の神経活動を可視化する方法の開発:今後は、実験系を確立し、様々な分子マーカーによって標識される細胞種選択的な神経活動を計測する方法の確立を目指す(3)見出された分子マーカーによって分離される細胞群の機能:分子マーカーによって標識される細胞群の活動を変化させた際に、恐怖記憶に対して影響を与える可能性を、マウスモデルを用いて見出しており、今後も引き続き検討を加え、結論を得る。また、実際に恐怖を与えた際に、同定した細胞群の活動がどのように変化するのか、神経活動依存的な遺伝子発現マーカー(c-fosなど)を用いて検討する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Molecular Brain
巻: 9:8 ページ: xx
10.1186/s13041-016-0189-3