研究課題/領域番号 |
15K14348
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サリドマイド / セロトニン / 神経発火 / セレブロン / フタルイミド化合物 |
研究実績の概要 |
計画2年度には、サリドマイド誘導体のもつセロトニン神経発火抑制活性の分子受容メカニズムを解明するため、より選択性の高いフタルイミド化合物の合成を共同研究先に依頼した。加えて、パッチクランプ法を用いて、延髄・縫線核のセロトニン神経細胞のサリドマイドによる電流変化を質的に分析した。 将来に計画されているビオチン化や固定化を考慮して、基質化合物としてサリドマイドとポマリミドを選び、そのフタルイミド環、グルタミル環の修飾を実施した。4種類の新規フタルイミド化合物を合成して、それらのセロトニン神経発火抑制活性を測定したが、いずれの化合物も基質化合物の当該活性を大きく下回るものであった。結果、これらの化学修飾は生理活性を喪失させるもので、今回の化学修飾が不適当であることが判明した。 一方、サリドマイドによるセロトニン神経発火抑制の生理メカニズムを、延髄・縫線核のセロトニン神経細胞をパッチクランプするとで、詳細に分析した。電位パルスを変化させること、種々のチャンネル阻害剤を添加することで、セロトニン神経発火抑制に関与するイオンの同定を試みた。サリドマイドにより遅延性と思われるカリウムチャンネルの開口が変化していることが判明した。 今後は、セロトニン神経細胞にだけ発現しているカリウムチャンネル分子に着目して、当該チャンネル分子とサリドマイドや活性のないレナリミドとの相互作用を評価することで、新規サリドマイド受容体の同定を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
残念ながら上述のように、修飾基を導入されたサリドマイドやポマリミドは、セロトニン神経発火にわずかな影響しか及ぼさなかった。つまり、現状ではセロトニン神経発火抑制活性の責任受容体分子を標識する手段を得ていない。
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今後の研究の推進方策 |
当該計画の再考が必要になったため、事業期間の延長を申し出て、承認されている。この延長期間中に、セロトニン神経細胞の分子プロファイルを参考にして、結合分子候補をしらみつぶしにアッセイすることで、当該サリドマイド受容体の同定を試みる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していたサリドマイドやポマリミドの化学修飾により肝心の生理活性が喪失してしまった。結果、セロトニン神経発火抑制活性に対する責任サリドマイド受容体の同定計画に再考を迫られたため、研究期間の延長が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
セロトニン神経発火抑制にはカリウムチャンネルが関与することが判明したので、セロトニン神経細胞の遺伝子プロファイルを参考に、シラミツブシ的に各種カリウムチャンネルに対するサリドマイド作用を分析する実験計画に使用する。
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