サリドマイドは、催眠作用のある薬物であるが、その薬理学的機序は不明のままであった。我々はサリドマイドを代表とするフタルイミド化合物が延髄・背側縫線核セロトニン神経の活動発火を低下させることを見出し、その受容体や分子機序を探求する計画を立案し、実施してきた。これまでの薬理学データとサリドマイド結合分子CRBNのノックアウトマウスの実験から、CRBN分子では、この現象が説明できないことを見出している。 予定計画では 2年目にサリドマイドの固定化を計画していたので、共同研究を実施して、外部機関にサリドマイドやポマリミドに官能基を導入を依頼した。しかし、どちら物質の化学修飾においても、元来サリドマイドやポマリミドの有する抗セロトニン活動低下活性は消失してしまった。そのため計画を一年延長して、別方法にて研究を進めた。 延長研究期間3年目では、サリドマイド誘導体が縫線核セロトニン神経活動発火をどのように修飾しているかを電気生理学的に詳細に分析した。延髄スライス標本を用いてパッチクランプを実施した結果、電位依存性の解析からカルシウム活性化カリウムチャネルの大コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャネルと小コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK)チャネルがその調節分子候補としてあがった。市販されているこれらチャンエルの阻害剤を用いた結果、サリドマイドにより小コンダクタンスカルシウム活性化カリウム電流が影響を受けルことが判明した。 現在、これらの実験結果の論文作製に向けて準備を進めている。
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