研究課題/領域番号 |
15K14349
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村松 里衣子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90536880)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 加齢 |
研究実績の概要 |
加齢に伴い、組織の修復力は低下する。脳と脊髄から成る中枢神経系においても、様々な病態により傷ついた神経組織の修復力は、加齢に伴って低下する。本研究では、幼若期における高い組織修復力を解明し、その分子メカニズムを加齢環境に還元することで、傷ついた組織の修復力の増進を促すことを目的としている。 中枢神経疾患の後遺症を軽減する方法の一つに、神経回路の修復が挙げられる。本け乳では、神経回路の修復過程の中でも、特に髄鞘修復に着目した。髄鞘は、オリゴデンドロサイトから形成される構造物であり、オリゴデンドロサイト前駆細胞が増殖、遊走、分化することで、成熟オリゴデンドロサイトへ発達して髄鞘が完成する。これらのオリゴデンドロサイト前駆細胞の発達過程に対して、幼若期と老齢期の全身環境の差がいかなる影響を与えるか検討することを目的とした。全身環境の因子として、それぞれの週齢、月齢のマウスから採取した血液を用いた。オリゴデンドロサイト前駆細胞は、マウス脳からオリゴデンドロサイト前駆細胞の細胞表面に発現する分子を認識するビーズを用いて単離、培養した。それぞれの血清を添加して、オリゴデンドロサイト前駆細胞の発達過程に対する影響を評価したところ、加齢マウスの血液にオリゴデンドロサイト前駆細胞の遊走を阻害する働きがあることがわかった。薬理学的なスクリーニングを実施し、オリゴデンドロサイトの遊走阻害に関する分子メカニズムの一端を解明した。今後、遊走阻害因子の同定を進め、さらに同定因子が個体レベルでの髄鞘修復の阻害にも寄与するか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定よりも早く、オリゴデンドサイト前駆細胞の発達阻害に関する現象の同定と、関連分子メカニズムの一端を解明することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
オリゴデンドロサイト前駆細胞の遊走を阻害する分子の同定を行う。加齢マウスの血液および幼若マウスの血液をそれぞれ採取し、生化学的な分画実験と薬理学的なスクリーニングを組み合わせて、分子の同定を目指す。生化学的な手法は、密度勾配遠心法やHPLC、二次元電気泳動法など複数のアプローチを試み、又組み合わせて実施する。また質量分析による候補分子群の解析も実施して、候補分子の活性についてin vitroでスクリーニング実験を行う。 上記手法において同定した分子の発現パターンおよび受容体の発現について、種々の週齢、月齢のマウスを用いて検討する。同定分子の発現は、血漿と脳脊髄液内でELISA法により検討し、受容体発現は免疫染色法により評価する。さらに、同定した因子の受容体発現を抑制させたマウスにおける、加齢における髄鞘の修復力の低下に対する効果についても検討する。髄鞘の修復は、組織学的な評価に加え、生化学的な(髄鞘関連タンパク質量の変化)検討も実施する。また髄鞘の脱落・修復と関連する行動試験も実施し、加齢にともなう神経組織修復力の低下に伴う症状軽快の抑制に対して、同定因子の寄与を検証する。
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