研究課題
睡眠覚醒リズムを作るメカニズムについては現在もなお不明な点が多い。我々は、入眠時にシナプスが減少し、覚醒時にシナプスが増加するという過去の報告に着目した。ラット前頭葉皮質のウエスタンブロッティングを行い、実際にラットの入眠時に当たる午前7時にシナプスが減少し、覚醒時の午後7時に増加していることを確認した。午前3時より4時間ごとにラット大脳皮質よりRNAを採取し、mRNA発現の変化を見たところ、マイクログリアマーカーのCX3CR1やF4/80、細胞移動に関わるMMP、貪食に関与する補体やMFG-E8などが午前7時に発現のピークを持つ日内変動を示すことを見出した。また、FACSや免疫組織化学染色、マイクログリアの正常脳からの分離などの手法により、午前7時にはマイクログリアの細胞体が大きくなり、かつ、シナプスを貪食していることを明らかにした。また、シナプトソーム分画には、補体やMFG-E8などのeat-me signal関連分子が結合しており、これらの分子が介在してマイクログリアによる入眠時のシナプス貪食が生じているものと考えられた。マイクログリアの貪食を抑制するデキサメサゾンを投与すると、覚醒時間が延長し、non-REM睡眠が減少した。このようなマイクログリアによる日内変動するシナプス貪食に関し、ノルアドレナリンに着目した。大脳皮質ノルアドレナリンは午後5時に最高値となり、午前9時ごろ最低値となった。ノルアドレナリンは、マイクログリアの貪食を抑制するが、脳内ノルアドレナリンを枯渇させるレセルピンは覚醒時間を短縮し、non-REM及びREM睡眠を増加させた。レセルピンをノルアドレナリン前駆物質L-DOPSとともに投与するとレセルピンの効果は消失した。以上の結果は、マイクログリアは入眠時前後にシナプスを貪食してnon-REM睡眠の成立に寄与しているものと考えられた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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