研究課題/領域番号 |
15K14353
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
竹居 光太郎 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (40202163)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | LOTUS / 髄液 / 血液 / 診断マーカー / バイオマーカー / 多発性硬化症 / 神経障害 |
研究実績の概要 |
多発性硬化症の病勢に伴って脳脊髄液中のLOTUS濃度が著明に変動することを見いだした。即ち、多発性硬化症の再発時には健常人に比してやく50%減少し、寛解期には健常人レベルに回復することが見られ、病勢に従った変動を示した。現在、多発性硬化症において病態を反映した有用なバイオマーカーが存在しないため、侵襲度の低い検体における新たなバイオマーカーの開発を目的とし、血液中に含まれる微量なLOTUSの検出・定量を試みた。まず最初に、血液中に分泌されるLOTUSのC末端領域特異的配列について質量分析計を用いて解析したところ、種々のC末端断片が同定され、ELISA法に供するためのLOTUSに対する特異抗体作製に必要な抗原ペプチドを同定した。次に、その抗原ペプチドを用いてモノクローナル抗体の作製を試みた。得られた数種のモノクローナル抗体の内LOTUSに対する高い特異性を示す抗体、および既存の抗体を用いてウエスタンブロッティング法やMRM法によって血液中に含まれる微量なLOTUSを検出することに成功した。現在、得られたモノクローナル抗体を用いてELISA法による検出キットを作製中である。しかしながら、より効率的に血液検体から定量的にLOTUSを検出するためには、抗体の特異性を更に高める必要があったり、MRM法における免疫沈降効率を更に上げる必要があったりするため、これらの諸課題を克服するための更なる開発が必要で、現在、それらの課題に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成27年度計画にある「ELISA法のためのモノクローナル抗体の作製」では、血液中に分泌されるLOTUSのC末端領域特異的配列を質量分析によって解析した。その結果、種々のC末端領域の断片が同定され、それらの断片に共通する特異的配列を抗原としてモノクローナル抗体を作製した。現在、得られたモノクローナル抗体を用いてELISA法による検出キットを作製中である。一方、「血液中のLOTUSの検出、定量への挑戦」では、既存の抗体や上記の新たに得られた抗体を用いてウエスタンブロッティング法やMRM法によるプロテオーム解析によって血液中のLOTUSの検出を試みた。これら両者の方法によって、血液中に含まれる微量のLOTUSを検出することに成功した。しかし、定量性においては抗体の感度や免疫沈降法における効率を改善する必要があり、現在これらの問題点の克服に向けた検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、作製したモノクローナル抗体を用いたELISA法キットを完成させ、MS患者および非MS患者(変性疾患、炎症性疾患、非神経疾患等)の多数の検体を解析する。これらの症例における血液中のLOTUS濃度の変動とその特徴を検討し、臨床情報と併せて解析することでバイオマーカーとしての有用性と病態への関わりを明らかにする。一方、リンパ球の培養系・機能解析手法を用い、ヒトおよびマウスのリンパ球を用いてLOTUSの発現変動と種々のリンパ球反応の相関性や、リンパ球が産生するサイトカインの変動をin vitro実験系で解析し、MS病態とLOTUSとの関連性を攻究する。
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