研究実績の概要 |
多発性硬化症の病勢に伴って脳脊髄液中のLOTUS濃度が著明に変動することを見いだし報告した(Takahashi et al., 2015)。多発性硬化症における病態を反映した感受性の高い有用なバイオマーカーは現存していないため、より感受性の高い新たなバイオマーカーの開発を目的とし、血液中に含まれる微量なLOTUSの検出・定量を試みた。 まず最初に、血液中に分泌されるLOTUSのC末端領域特異的配列を解析したところ、切断部位はEGF-CAドメインと予想GPI結合部位との中間に位置し、様々な部位で切断された7種の断片を見いだした。その7種の断片ペプチドを作製してMRM法にて検出感度を測定したところ、多くはMRM法による検出感度としては不足するものであったが、1種の断片は検出感度が高いものであった。しかしながら、血液中に実際に存在するLOTUSの断片をMRM法で測定した場合、正しくLOTUS断片を検出しているか不明な点があり、現在その検証を行っている。一方、ELISA法に供するためのLOTUSに対する特異抗体作製に必要な抗原ペプチドを同定した。次に、その抗原ペプチドを用いてモノクローナル抗体の作製を試みた。既存の抗体、および新たに得られたモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティング法によって血液中に含まれる微量なLOTUSの検出に成功した。 血液は、脳脊髄液とは異なり、Crtac-1AというLOTUS(別名Crtac-1B)のスプライシングバリアントが多量に含まれているため、Crtac-1AとLOTUSを区別できる特異性の高い抗LOTUS抗体によるELISA検出を試みると供に、LOTUS断片をV8プロテアーゼなどで低分子化して感度を上げたMRM法による検出を試みる予定である。
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