研究課題/領域番号 |
15K14354
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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研究分担者 |
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
森田 晶子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70647049)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シナプス / アストロサイト / 微細突起 / 運動 / 光遺伝学 / ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
昨年度までの結果で運動負荷が淡蒼球におけるOlig2アストロサイトの形態変化、特に微細突起の複雑性を増す方向に形態変化を起こさせることを示した。これは三つ組みシナプスの形態的な可塑性を示すデータとして論文として報告した(Tatsumi et al. Frontier Cell. Neruosci.2016, 文献リスト参照)。当初の目的ではこのOlig2アストロサイトにジフテリアトキシンを発現させることで細胞死を誘導し、その影響を見るということであったが、予備的検討でアストロサイトに細胞死を誘導すると脳血液関門の破綻による組織破壊が著明に起こることで、三つ組みシナプスの有無を検定することは実際上不可能であることが判明した。よってOlig2アストロサイトに光感受性チャネルであるチャネロドプシン、ハロロドプシンを発現させて、レーザー光を用いてそれらチャネルを活性化或いは抑制化することでシナプス伝達(運動機能)に変化が現れるか否かを検討する事にした。具体的にはOlig2-CreERマウスの淡蒼球或いは黒質網様部にアデノ随伴ウイルスベクターに組み込まれたFloxーStop チャネロドプシン、或いはハロロドプシンを微量注入し、次に同部位に青色レーザー光(チャネロドプシン)、黄色レーザー光(ハロロドプシン)を光ファイバーを用いて導入する実験を試みた。この実験の予備検討としてアデノ随伴ウイルスベクターにFlox-EGFPを組み込んだ試験ベクターを注入してOlig2アストロサイトにEGFPが効率よく発現するかどうかを検討したところ、想定したよりかなり少数のアストロサイトにしかEGFPが発現せず、また発現量(蛍光量)も少ないという事実が判明した。よって現在ウイルスベクターのタイターを上げる、或いはOlig2-CreERマウスではなく、GFAP-Creマウスを用いるなどの手法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のOlig2アストロサイトを特異的にジフテリアトキシンで破壊するという実験は脳構造の大幅な改変につながるということで、よりマイルド且つ特異的なアストロサイトの機能改変を目指して光遺伝学的手法(光感受性チャネル分子であるチャネロドプシン、ハロロドプシンの導入)を用いて主に予備的検討を本年度は行った。手法の変換はあったが、最終的な目的である三つ組みシナプスの機能改変に向けて有用な系の構築が出来ていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Olig2アストロサイトにウイルスベクターの導入が効率的に入らないという現象にぶつかっているのでこれをブレークスルーするために1)GFAP-Creマウスを用いる、2)ウイルスベクターの種類を変更する、3)ウイルスベクターのタイターを上昇させるという3種類の方策を同時に現在試行している。 これとは別に光遺伝学的手法に加えて、Olig2 アストロサイト或いはGFAPアストロサイトにDREADDを導入して薬剤刺激でアストロサイトの機能改変を行う実験も同時並行で行っていくことで多角的に三つ組みシナプスの機能改変に取り組んでいく予定である。
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