研究課題
Cre-LoxPシステムを用いた条件付き遺伝子欠損(Conditional Knockout, cKO)マウスは生命現象や病気の分子機構を個体レベルで解明するため必要なツールであり、その成功はCreドライバーマウスのCre遺伝子プロモーターの正確な転写能力に大きく依存する。内在性遺伝子発現を模倣する最も信頼性のある正確なCre遺伝子発現制御方法はその内在性遺伝子プロモーター直下へのCre遺伝子ノックインであるが、そのアレルからの内在性遺伝子発現を欠損させることとなる。そこで申請者はゲノム編集方法を利用し、興味ある内在性遺伝子を傷つけることなくCre遺伝子を同時に発現させるバイシストロニックCre発現システムにより新たなCreドライバーマウス開発を短期間で実施させることを本研究の目的とした。CRISPR/Cas9システムでIns1遺伝子のストップ配列直上流部位を2A配列融合cre遺伝子挿入の標的とした。C57BL/6J-Ins1em1(cre)UtrマウスはgRNAとCas9をコードするpX330と及び DNAドナープラスミドの受精卵前核導入により作製された。(R26GRR x C57BL/6J-Ins1em1(cre)Utr) F1マウスは胎仔及び成体でcre-loxP遺伝子組換えが組織学的に解析され、全ての膵島においてインスリン陽性細胞の殆どは赤色蛍光を示し、β細胞特異的な遺伝子組換えが示唆された。さらにホモ及びヘテロC57BL/6J-Ins1em1(cre)Utrの耐糖能は野生型マウスと有意差が観察されなかった。これらの結果より、C57BL/6J-Ins1em1(cre)Utrはグルコース代謝研究に有用であり、CRISPR/Cas9システムを用いたバイシストロニックcreノックインマウスの作製戦略はcreドライバーマウス作製において有用な方法であると思われる。
1: 当初の計画以上に進展している
本計画はゲノム編集方法を利用し、興味ある内在性遺伝子を傷つけることなくCre遺伝子を同時に発現させるバイシストロニックCre発現システムにより新たなCreドライバーマウス開発を短期間で実施させることである。既に1系統を作製し、その成果はGeneration of CRISPR/Cas9-mediated bicistronic knock-in Ins1-cre driver miceとしてまとめられ、Exp Animに受理された。また、第63回日本実験動物学会でも発表する。
本計画はゲノム編集方法を利用し、バイシストロニックCre発現システムにより新たなCreドライバーマウス開発であり、既に1系統の開発が終了したが、もう一系統の実施により確実となるため、他の系統の開発を引き続き実施する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Experimental Animals
巻: 65 ページ: accepted
10.1538/expanim.16-0016