研究課題
Cre-loxPシステムを用いた条件付き遺伝子欠損(Conditional Knockout, cKO)マウスは生命現象や病気の分子機構を個体レベルで解明するため必要なツールであり、その成功はCreドライバーマウスのCre遺伝子プロモーターの正確な転写能力に大きく依存する。内在性遺伝子の発現を模倣する最も信頼ある正確なCre遺伝子発現制御方法はその内在性遺伝子のプロモーター直下へのCre遺伝子ノックインであるが、そのアレルからの内在性遺伝子発現を欠損させることになる。そこで申請者はゲノム編集方法を利用し、興味ある内在性遺伝子を傷つけることなくCre遺伝子を同時に発現させるバイシストロニックCre発現システムによりCreドライバーマウスの開発を短期間で実施することに挑戦した。1)Ins1遺伝子終止配列直上に2A-Cre遺伝子をノックインしたマウスをCRISPR/Cas9とドナーDNAの前核期卵導入によって作製した。作製されたマウスはCreレポーターマウスとの交配によりF1マウスを作製し解析した結果、膵島β細胞でのみCre-loxP遺伝子組換え能力を持つこと、Creドライバーマウスは耐糖能異常がないことが確認された。2)Gdf9遺伝子終止配列直上に2A-Cre遺伝子をノックインしたマウスを上記同様の方法で作製した。作製されたマウスはCreレポーターマウスとの交配によりF1マウスを作製し解析した結果、卵巣の卵子においてのみCre-loxP遺伝子組換え能力を持つことが確認された。これらの結果より、ゲノム編集によるバイシストロニック2A-Cre遺伝子のノックインはCreドライバーマウス作製において有用な方法であることが明らかとなった。
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Exp Anim.
巻: 65 ページ: 319-327
10.1538/expanim.16-0016.