研究課題
ガラクトース転移酵素であるβ4GalT-1の欠損マウスはIgA腎症を自然発症する。このマウスはIgA腎症患者と同様に,IgA分子の糖鎖不全と高IgA血症が見られ,これらが発症に関与すると考えられる。FACSやElispot法により,β4GalT-1欠損マウスの腸管においてIgA産生細胞が増加している傾向が見られたので,CD3, B220, CD11cなどの免疫担当細胞のマーカーを用いて,十二指腸,空腸,回腸,結腸,直腸について免疫染色を行った。このマウスは加齢すると腸管同士や腸管と腹膜の癒着が発生するので,その癒着部位には免疫担当細胞の集積が見られたが,それ以外の領域ではコントロールマウスとβ4GalT-1欠損マウスに有意な違いはなかった。また,IgAの免疫染色も行ったが,IgAを高発現している領域は検出できなかった。一方,粘膜免疫に重要な役割を担っているムチン型糖鎖について調べるために,ムコ多糖を染色するアルシアンブルー染色を行ったところ,β4GalT-1欠損マウスの腸管でムチン型糖鎖が増加していることが分かった。β4GalT-1欠損によりムチン型糖鎖が増加する因果関係は不明だが,このことが高IgA血症,IgA腎症につながるかもしれない。腸管上皮細胞と抗体産生細胞での組織特異的β4GalT-1欠損マウスの作製については,CRISPR/Cas9法による受精卵へのノックインベクターのインジェクションを行ったが,受精卵でのloxP配列の挿入が困難であったので,B6背景のES細胞でのノックインで進めることにした。
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FASEB Journal
巻: 31 ページ: 2252-2266
10.1096/fj.201600642R
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/research/index.html