研究課題
生命科学研究の発展において、個体レベルでの遺伝子機能解析が果たしてきた役割は大きい。近年報告された次世代のゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムは、従来法に比べて、非常に簡便かつ高効率に遺伝子改変動物を作製することができる。本課題では、単純な遺伝子破壊(KO)ではなく、点変異やノックインなどのより高度なゲノム編集を試み、CRISPR/Cas9システムを使ったオンデマンド変異動物作製法の構築を目指した。われわれは以前に、sgRNA/CAS9共発現プラスミドDNAを環状のまま受精卵へ注入することで、効率良くKOマウスを作製できることを報告した(Sci Rep. 2013, Dev Growth Differ. 2014)。まず始めに、同様の方法で点変異およびノックインマウスの作製を試みた。その結果、点変異(一本鎖オリゴDNA導入)やタグ(二本鎖DNA導入)などの0.1kb以下のノックインは効率良く導入できたが、GFPなどの1kb程度の発現カセットのノックインは、ほとんどのケースでうまくいかなかった。つまり、受精卵注入法でのノックイン効率は、導入カセットの大きさに依存して低下することが分かった。そこで、ゲノム編集効率が高いと報告されているマウスES細胞を使って、点変異やノックインを試みたところ、受精卵注入法とは異なる結果が得られた。つまり、一本鎖オリゴDNAよりも二本鎖DNAの方が、はるかに効率良く目的変異を導入することができた。さらに、従来のターゲティングベクターの相同領域は、両腕とも5kb程度必要であったが、CRISPR/Cas9システムを使ってES細胞へ変異導入する際はそれぞれ0.5~1.0kbで十分であることも分かった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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