研究課題/領域番号 |
15K14368
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 健 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10241241)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 突然変異 / マウス / 量的形質 / 遺伝学 / 進化 / 多様性 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々がこれまでに作製した内在的に遺伝子変異を高発するマウス系統を継代することにより、生きたマウス個体に遺伝的多型を蓄積させ、新たな生命デザインモデル作製系の確立を試みるものである。本年度は、長期間継代された遺伝子変異率増加マウスとコントロール系統、合計7匹のマウスに対して全ゲノムシーケンシング結果を解析した。その結果、実験室マウス1世代あたりで起こる突然変異率を世界で初めて確定するとともに、我々が作製した内在的に遺伝子変異を高発するマウス系統では、この約17倍の突然変異率に上昇していることが明らかになった。この突然変異率は、これまでに知られている変異導入方法よりも高く、最も多数の変異導入が可能な実験モデルであることが確認された。また、突然変異蓄積により出生数、生存率が低下するとともに、体重などの量的形質のばらつきが大きくなることが明らかとなった。これらの結果は、Genome Research誌に掲載され、内外からの高い評価を受けている。また、継続してマウス系統の継代を重ね、表現型に異常が見られたマウスについての解析を行っている。更に、全ゲノムシーケンシング結果を解析した遺伝子変異率増加マウスの雄とC57BL/6雌の後輩によりF1を得、そのF1同士を掛け合わせることにより、F2、F3の作製を行い、この世代のマウスについて、マウスクリニック解析を行った。その結果、マウス27匹の内17匹で、高血糖、心臓肥大などの何らかの異常が認められ、この遺伝子変異率増加マウスは、疾患モデルマウス作製に有効な系であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
突然変異蓄積マウスの全ゲノム配列を決定し、世界で初めて実験室マウスの自然突然変異率を決定することに成功した。また、これらの成果がゲノム分野での代表誌であるGenome Researchに掲載されるとともに、表紙に採択されるなど、内外から高い評価が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、内在的に遺伝子変異を高発するマウス系統で蓄積されたシーケンスデータを解析することにより、突然変異の発生メカニズムを明らかにする。 また、マウス系統の継代により得られた興味深い質的形質(シンギングマウスなど)の解析を行うとともに、これら形質をもたらす遺伝子変異を明らかにする。 さらに、今回の系統とは別の内在的に遺伝子変異を高発するマウス系統の全ゲノムシーケンス解析を行い、変異の方向性や性質を明らかにする。これと同時に、全ゲノムシーケンス解析したマウス精子を用いて、野生マウス卵と体外授精を行い、F1マウスを得る。これらF1マウスの雄と雌を掛け合わせることにより得られたF2マウスでの表現型解析を行い、多数の突然変異の組み合わせと表現型の関係について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予算執行を行った後、残高が27,761円となった。この残高については、次年度の共同研究打ち合わせに関わる旅費予算として計上することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究打ち合わせの旅費の1部として執行する。
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