研究課題
一般に癌組織ではミトコンドリアによる酸化的リン酸化より好気的解糖系が優位になっており(ワールブルグ効果)、この状態が癌細胞の増殖に有利に働いていると考えられている。しかしこの代謝シフトが発癌過程のどの段階で起こっているのかは未知であり、腎癌発癌過程におけるミトコンドリアの役割も未知である。本研究では腎癌の発癌過程において、糖代謝機構の変化が促進的に働くのか否かを、申請者が新たに樹立するPRCC-TFE3転座腎癌発癌マウスモデルを用いて明らかにする。具体的には下記を明らかにすることを目的とする。1) PRCC-TFE3 マウス腎臓組織において、糖代謝の状態を解析し、代謝シフトが発癌過程のどの段階で起こるのかを明らかにする。2) PRCC-TFE3 転座腎癌モデルマウスとミトコンドリア機能のマスター転写因子であるPGC1αのノックアウトマウスを交配して表現型を詳細に解析することにより、腎癌発癌過程におけるミトコンドリア活性(酸化的リン酸化)の果たす役割を解明する。27年度はPGC1αコンディショナルノックアウトマウス(PGC1α flox/wild)を導入し、腎臓特異的にクレ組み換え酵素を発現するトランスジェニックマウス(Cadherin16-Cre)並びにクレ組み換え酵素依存的にPRCC-TFE3を発現するノックインマウス(lsl-Rosa26-PRCC-TFE3)との交配を進めた。交配は順調に進んでおり、28年度には目的とするコホートが得られる見込みである。マウス腎臓の発癌過程における糖代謝機構の変化を組織形態と関連付けて解析するため、凍結腎臓組織切片上のメタボライトをイメージング質量顕微鏡で分析するための準備を進めている。また、PRCC-TFE3発現誘導細胞株並びに腎臓特異的にPRCC-TFE3を発現する転座腎癌マウスモデルを用い、遺伝子発現の側面から解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
目的とする遺伝子改変マウスの作製が順調に進んでいる。細胞株並びにマウスモデルを用いた解析からPRCC-TFE3の転写標的遺伝子を同定し、学会発表を行った。
28年度はマウスモデルの解析を中心に、PRCC-TFE3 転座腎癌モデルマウスでの発癌におけるミトコンドリア機能の果たす役割の解析を更に進める。
平成27年度は、解析目的のマウス交配に時間を要するため、質量分析イメージング等の解析を平成28年度にまとめて行う事として、消耗品費の出費を抑えた。
平成27年度から交配を進めた遺伝子改変マウスの解析費用や解析に要する消耗品の購入、マウス飼育費、技術補佐員の給料に充てる計画である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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