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2015 年度 実施状況報告書

採卵・顕微注入・移植を要しない、新しい遺伝子改変マウス作製法の開発と応用

研究課題

研究課題/領域番号 15K14371
研究機関東海大学

研究代表者

大塚 正人  東海大学, 医学部, 准教授 (90372945)

研究分担者 和田 健太  東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (20508113)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードゲノム編集 / マウス / 白内障 / CRISPR/Cas9 / piggyBac
研究実績の概要

前年度までに、妊娠雌マウスの卵管にRNAを注入し、エレクトロポレーション処理する(GONAD法)ことにより、卵管内に存在する2細胞期胚にRNAを導入してゲノム編集を行うことが可能であることを示した。しかしながら、この時点では着床前胚の結果のみしか得られていなかったため、平成27年度は本手法にてゲノム編集着床後胚、およびマウス個体を得ることを目指した。また、最適条件の検討と標準プロトコル作成も進めた。
まず、2細胞期胚である1.5日胚の受精卵(交配しプラグが確認された次の日)を含む卵管にCas9とsgRNA(eGFPに対するもの)をRNAとして導入し、エレクトロポレーションを施した。これは0.5日胚の受精卵は卵丘細胞に覆われており、核酸が受精卵に到達するための物理的障害となるためである。着床後胚(13.5~19.5日)で解析したところ、57個体回収した胚のうち14個体(25%)で遺伝子が破壊されていることを確認した。しかしながら、2細胞期胚での導入はモザイク率が高くなると考えられる。
そこで次に、卵丘細胞との接着が緩んできていると考えられる0.7日胚の受精卵に対してGONAD法を施した。この際に、白内障の原因遺伝子と考えられるFoxe3遺伝子に対するsgRNAを用いた。8個体の妊娠マウスに対して実施したところ、計36個体の仔を出産し、そのうち10個体(28%)に変異が導入されていることを確認した。これは、実用性としても十分な効率である。さらに0.7日胚で処理することは (i) 卵管内の受精卵の存在位置が限局されている(核酸溶液の注入が容易になる)、(ii) 0.7日胚は後期1細胞期胚であると考えられ、2細胞期胚である1.5日胚にGONAD処理を施す場合と比較してゲノム編集のモザイク率が低いことが期待される、と言った利点を有すると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度は、GONAD法に関してこれまでの結果を論文化(Takahashi et al. Sci Rep 2015)するなど、複数の業績に繋げることができた。化学工業日報や科学新聞等にプレスリリースをしただけでなく、Nature Japanサイトでも「注目の論文」として取り上げられる(https://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/ 66946)などの反響が大きいものであった。また、本研究を実行した高橋氏は北海道実験動物研究会で口頭発表を行い、若手優秀賞を受賞した。さらに、本手法のプロトコル論文も発表した(Gurumurthy et al. Curr Protoc Hum Genet 2016)。以上より、当初の予定よりも早く成果を上げることができたと言える。一方で、DNAベクター(piggyBacも含め)を導入してGONADを行う実験はまだ実施しておらず、その点では一部遅れている実験もある。以上のことから、概ね順調に進展しているという評価とした。

今後の研究の推進方策

今後は、平成27年度にGONAD法で作製したFoxe3ゲノム編集個体の変異アリルが次世代に伝播することを確認し、その効率等を検証するとともに、ホモ個体を作製するなどして実際に白内障を生じるか否かを解析し、白内障モデルマウス作製に結びつけていきたい。また、Foxe3のエンハンサー候補領域に対するGONADを施して変異体を作製し、その候補領域が実際にエンハンサーとして機能することを個体レベルで検証する。
これまではT820 エレクトロポレーター(BTX 社の20 年近く前の機器:現在入手不可)を用いてきたが、他の研究者が再現実験を行う上でも、最新機器を用いた最適化プロトコルの存在が望ましい。例えば、NEPA21(ネッパジーン)では、細胞膜に微細孔を開けるためのパルスと遺伝子を細胞内に送達させるためのパルスを個別に設定可能であり、さらに極性の切替えもできるため、細胞へのダメージを減らし且つ遺伝子導入効率を上げられるものと期待される。そこで、本機器を用いて条件検討を行う。
piggyBac トランスポゾンシステムは、piggyBac 関連核酸が導入された細胞内にて極めて高効率で目的遺伝子のゲノムへの挿入が行われる技術である。piggyBacトランスポゾンを用いてGONAD法を行い、Tgマウス作製への応用を目指す。これにより、機能獲得型の動物モデル作製も可能となる。まずは、蛍光遺伝子発現カセットを有するpiggyBac トランスポゾン(Miura et al.2013)を用いて、システムが動くか否かを検証する。

次年度使用額が生じた理由

マウスの準備、及び維持のために、学内の支援センターを利用しており、そのための予算が必要となると考えていたが、2017年度は同様の研究テーマで学内の競争的資金を獲得できたため、一部をそちらから捻出することができた。

次年度使用額の使用計画

これまでに作製したマウス、及び今後作製するマウスについて多数の個体を維持・解析する予定であり、そのために学内の支援センターを利用する。学内の研究費は2017年度で終了してしまったため、次年度は全て本科研費から支援センター利用料等を捻出する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ネブラスカ大学医療センター(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ネブラスカ大学医療センター
  • [雑誌論文] GONAD: a novel CRISPR/Cas9 genome editing method that does not require ex vivo handling of embryos2016

    • 著者名/発表者名
      Gurumurthy C.B., Takahashi G., Wada K., Miura H., Sato M., and Ohtsuka M.
    • 雑誌名

      Curr. Protoc. Hum. Genet.

      巻: 88 ページ: 15.8.1-15.8.12.

    • DOI

      10.1002/0471142905.hg1508s88.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] GONAD: Genome-editing via Oviductal Nucleic Acids Delivery system: a novel microinjection independent genome engineering method in mice2015

    • 著者名/発表者名
      Takahashi G., Gurumurthy C. B., Wada K., Miura H., Sato M. and Ohtsuka M.
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 5 ページ: 11406

    • DOI

      10.1038/srep11406

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] PiggyBac transposon-mediated gene delivery efficiently generates stable transfectants derived from cultured primary human deciduous tooth dental pulp cells (HDDPCs) and HDDPC-derived iPS cells.2015

    • 著者名/発表者名
      Inada E., Saitoh I., Watanabe S., Aoki R., Miura H., Ohtsuka M., Murakami T., Sawami T., Yamasaki Y. and Sato M.
    • 雑誌名

      Int J Oral Sci.

      巻: 7 ページ: 144-154

    • DOI

      10.1038/ijos.2015.18.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Improvement of GONAD (genome-editing via oviductal nucleic acids delivery), one of the zygote injection-free genome editing systems targeted to preimplantation embryos2016

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Sato, Channabasavaiah B. Gurumurthy, Satoshi Watanabe, Masato Ohtsuka
    • 学会等名
      13th Transgenic Technology Meeting (TT2016)
    • 発表場所
      Prague, Czech Republic
    • 年月日
      2016-03-20 – 2016-03-23
    • 国際学会
  • [学会発表] GONAD and Easy (Isi)-CRISPR: novel mouse genome engineering tools2016

    • 著者名/発表者名
      Masato Ohtsuka
    • 学会等名
      13th Transgenic Technology Meeting (TT2016)
    • 発表場所
      Prague, Czech Republic
    • 年月日
      2016-03-20 – 2016-03-23
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] zygote injectionに依らない生殖細胞、胚を標的とした遺伝子導入によるCRISPR/Cas9 genome editingの可能性2015

    • 著者名/発表者名
      佐藤正宏、大塚正人、中村伸吾、桜井敬之、稲田絵美、齋藤一誠、渡部聡
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会(BMB2015)
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド (兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] GONAD: a novel CRISPR/Cas9 genome editing method that does not require ex vivo handling of fertilized eggs2015

    • 著者名/発表者名
      Masato Ohtsuka, Gou Takahashi, Kenta Wada, Hiromi Miura, Channabasavaiah B Gurumurthy, Masahiro Sato
    • 学会等名
      29th International Mammalian Genome Conference (IMGC)
    • 発表場所
      Yokohama Port Opening Memorial Hall, (Yokohama, Kanagawa, Japan)
    • 年月日
      2015-11-08 – 2015-11-11
    • 国際学会
  • [学会発表] GONAD:採卵、顕微注入、移植を要しない新規ゲノム編集マウス作製法2015

    • 著者名/発表者名
      大塚正人、Channabasavaiah B Gurumurthy、三浦浩美、佐藤正宏、和田健太、高橋剛
    • 学会等名
      第108回日本繁殖生物学会大会
    • 発表場所
      宮崎大学 木花キャンパス (宮崎県宮崎市)
    • 年月日
      2015-09-17 – 2015-09-20
  • [学会発表] GONAD法:卵管を介したマウス2細胞期胚へのin vivo RNA導入による新規ゲノム編集マウス作製法2015

    • 著者名/発表者名
      大塚正人、佐藤正宏、高橋剛
    • 学会等名
      GE Life Sciences Day 2015
    • 発表場所
      パシフィコ横浜会議センター (神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2015-07-24 – 2015-07-24
  • [学会発表] ex vivo 処置を介さない CRISPR/Cas9 系による遺伝子改変マウス作製法「GONAD」 の開発2015

    • 著者名/発表者名
      高橋 剛、Channabasavaiah B Gurumurthy、和田 健太、三浦 浩美、佐藤 正 宏、大塚 正人
    • 学会等名
      第 12 回北海道実験動物研究会総会・学術集会
    • 発表場所
      北海道大学大学院医学研究科臨床講義棟第三講堂 (北海道札幌市)
    • 年月日
      2015-07-11 – 2015-07-11
  • [学会発表] 採卵、顕微注入、胚移植を要しない新規ゲノム編集マウス作製法2015

    • 著者名/発表者名
      高橋剛、和田健太、三浦浩美、佐藤正宏、大塚正人
    • 学会等名
      第 29 回モロシヌス研究会
    • 発表場所
      神戸 かんぽの宿 有馬 (兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-07-03 – 2015-07-04
  • [学会発表] 卵管を介したマウス 2 細胞期胚への RNA 導入法の開 発とゲノム編集技術への応用2015

    • 著者名/発表者名
      高橋剛、和田健太、三浦浩美、佐藤正宏、大塚正人
    • 学会等名
      第62回日本実験動物学会総会
    • 発表場所
      京都テルサ (京都府京都市)
    • 年月日
      2015-05-28 – 2015-05-30
  • [備考]

    • URL

      http://masato2.wix.com/ohtsuka-lab

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-27  

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