2017年度は、GONAD法のさらなる改良と応用性の拡張を進めた。得られた結果は以下のとおりである。 前年度までに、Cas9はmRNAではなくタンパク質を用いた方がゲノム編集効率が良い結果を得ていたが(i-GONAD法と命名)、今回はCas9だけでなくCpf1タンパク質を用いたゲノム編集にも挑戦した。標的遺伝子はチロシナーゼ(Tyr)とHprtである。その結果、両遺伝子座ともに高効率でゲノム編集が可能であることがわかった。 我々はこれまでに、長い1本鎖DNAをドナーとして用いることで高効率にノックインマウスを作製することが可能なEasi-CRISPR法を独自に開発したが、これがi-GONAD法に応用できれば同手法の汎用性の向上につながる。そこで、i-GONAD法に使用するために大量のssDNAをivTRT法で調製し、内在性遺伝子座位へのレポーター遺伝子の挿入を目指した。その結果、Pitx3座位で15%(5/34)、Tis21座位で7%(1/14)の効率でノックインに成功した。これらの正確なノックイン個体外にも、不正確に配列が挿入されている個体や標的領域にindelが生じている個体も確認され、それらを統合すると、Pitx3座位で62%(21/34)、Tis21座位で36%(5/14)がゲノム編集個体であった。本実験結果により、i-GONADを用いてノックインマウスが作製可能であることが示された。 さらに、国内(東海大)で4回のデモンストレーションを実施し、他大学/研究所の14研究室から来られた計21人の学生、研究者、技術職員に向けて講習を行った。また、海外でのワークショップは2回(ドイツ、アメリカ)で実施し、30以上の大学、研究所、企業から参加した多数の参加者に向けた講習を行った。 本実績はGenome Biology誌にて発表した。
|