研究課題
癌細胞におけるグルタミン代謝の制御システムの解明は、癌代謝研究の重要研究課題の一つである。癌細胞においては解糖系の亢進とともにグルタミン分解が亢進しているが、癌抑制遺伝子p53がグルタミン代謝の鍵となるGLS2を転写誘導することで、エネルギー産生や抗酸化作用を発揮していることを明らかとした。そこで、グルタミン代謝の癌における役割をin vivoにおいて明らかにするため、GLS2遺伝子のストレートノックアウマウスおよびコンデイショナルノックアウトマウスを作成を試みた。GLS2遺伝子は12番染色体に存在し、18個のexonから構成される。イントロン1にgene trap vectorが挿入し、exon2以降が翻訳されないようにデザインした。構築したターゲティングベクターをエレクトロポレーション法によってES細胞へ導入し相同組み換えES細胞を樹立した後に、キメラマウスマウスを作成した。最終的にキメラマウスとC57BL6マウスを交配して、その後、ヘテロマウス同士の交配によりGLS2ノックアウトマウスの取得に成功した。GLS2ノックアウトマウスはメンデルの法則に沿って交配可能であり、外表に明らかな異常を認めなかった。高脂肪食摂取により体重が有意に増加して肥満の表現型を呈していることが明らかとなった。特に脂肪重量の増加と脂肪肝を認めている。現在、NASHからの肝細胞癌モデルを構築して、肝細胞癌発症における役割を解析している。
2: おおむね順調に進展している
順調に進展している理由として、Gls2ノックアウトマウスの取得に成功したことが大きな要因である。特に、GLS2ノックアウトマウスはメンデルの法則に沿って交配可能であり、外表に明らかな異常を認めなかったので、交配して増やす事が可能であったことが理由である。
GLS2ノックアウトマウスのフェノタイプ解析として、体重の変化や脂肪の状態、外表奇形や癌の発生、行動異常などを詳細に検討する。特に、糖尿病や脂質異常症の検討のため、血糖・脂質関連の採血に加えてOGTTやITTなどの負荷試験を行いインスリン分泌・インスリン抵抗性の有無を調べる。加えて高脂肪食負荷や発癌物質を皮膚に塗布することで肥満や発癌を誘発し、そのフェノタイプを解析する。更に泳がせるなどの運動負荷を加えて運動耐容能の変化を調べる予定である。次に、GLS2コンデイショナルノックアウトマウスの作成と各臓器特異的GLS2の機能解析を行う。具体的には、細胞内代謝に重要や役割を果たしている肝臓、膵臓に加えて脂肪において臓器特異的にGLS2をノックアウトする。方法は、キメラマウスとFLPマウスと掛け合わせることによりgene trap部分が飛ばされ、FloxマウスができCREマウスと掛け合わせることによりloxpで挟まれたexon2-7が飛ばされる仕組みを用いる。肝臓はalbumin-creマウス、膵臓はRIP-cre 脂肪はaP2-creマウスと交配させる。GLS2はヒトおよびマウスの各臓器において比較的ユビキタスに発現しているが、特に肝臓、脳、膵β細胞に高発現していることが明らかとなっているので、インパクトのある結果が予想される。
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