研究課題/領域番号 |
15K14381
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
下野 洋平 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90594630)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳がん / 肝転移 / 異種移植マウス / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
全身に播種されるがん細胞が臓器選択的に定着する機構には、「播種先の臓器固有の微小環境へのがん細胞の適応(細胞順応)」の成否が関連すると考えられる。本研究は、初期の微小な肝転移が観察可能なヒト乳がん手術検体異種移植マウスを用いて、初期肝転移がん細胞の肝臓への「細胞順応」を、マイクロRNA発現を指標に解析することを目的としている。本年度は上記の研究目的を踏まえ、(1)原発巣と初期肝転移巣のがん細胞のマイクロRNA発現プロファイルの比較検討と(2)初期肝転移がん細胞と正常肝細胞のマイクロRNA発現の類似性の検討を進めた。 本年度の研究では、初めにヒト乳がん手術検体を移植した異種移植マウスを用いて、原発巣と初期肝転移巣のがん細胞をセルソーターを用いて分離した。得られたがん細胞およびマウスの正常肝細胞のマイクロRNA発現プロファイルを、リアルタイPCR法を用いたマイクロRNAアレイにより解析した。マイクロRNAの発現プロファイルの比較検討を通じて、1.初期肝転移に伴い発現が減弱または増強する一連のマイクロRNAとそのクラスター、および2.正常肝細胞と初期肝転移がん細胞に共通して発現がみられるマイクロRNAを同定した。さらに、肝臓組織の微小環境が、初期肝転移がん細胞のマイクロRNAの発現抑制に関わる新たな機構を見出した。 現在、「細胞順応」に関わる分子機構の解析を推進するため、初期肝転移がん細胞で発現が変化するマイクロRNAの前駆体のプロモーター領域の解析と、細胞順応が観察可能な正常肝細胞とがん細胞の共培養系の作製などを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ヒト乳がん異種移植マウスより分離した初期肝転移がん細胞と正常肝細胞のマイクロRNAプロファイルの解析を通じて、初期肝転移がん細胞で発現が変化する一連のマイクロRNAを同定するとともに、その発現制御の分子機構を新たに見出した。
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今後の研究の推進方策 |
正常肝初代培養細胞とヒト乳がん細胞の共培養系の確立により、初期肝転移がん細胞においてマイクロRNA発現が変化する分子機構や、それらのマイクロRNAの標的遺伝子の解析などを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究による検討を通じて、初期肝転移がん細胞でマイクロRNA発現が変化する機構の一つとして、エクソソームによる影響が重要である可能性が新たに考えられた。そのためエクソソーム解析の準備を新たに進めている。それに伴い「肝転移がん細胞を特徴づけるマイクロRNAの標的遺伝子の解析」は、次年度に実施するように計画を変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
「正常肝初代培養細胞とヒト乳がん細胞の共培養系を用いたエクソソーム解析」を2016年4月から6月に進める。その結果を踏まえて「肝転移がん細胞を特徴づけるマイクロRNAの標的遺伝子の解析」を2016年7月から9月に進める。その後先行実験で確立された共培養系を用いて「正常肝初代培養細胞とヒト乳がん細胞の共培養によるがん細胞順応機構の解析」を進めて結果をまとめる。
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