研究課題
全身に播種されるがん細胞が臓器選択的に定着する機構には、「播種先の臓器固有の微小環境へのがん細胞の適応(細胞順応)」の成否が関連すると考えられる。本研究は、初期の微小な肝転移が観察可能なヒト乳がん手術検体異種移植マウスを用いて、初期肝転移がん細胞の肝臓への「細胞順応」を、マイクロRNA発現を指標に解析することを目的としている。研究目的を踏まえ、本年度は下記の二点の解析を進めた。(1)転移がん細胞の細胞順応に関わる分子機構の解析:マイクロRNAの発現プロファイルの比較検討を通じて、1.初期肝転移に伴い発現が変化する一連のマイクロRNAと、2.正常肝細胞と初期肝転移がん細胞に共通して発現がみられるマイクロRNAを同定した。本年度は、その中でも特にmiR-106b-25 クラスターマイクロRNAに着目して、転移に伴う周囲環境の変化による発現制御機構の解析を進めた。解析を通じて、miR-106b-25クラスターマイクロRNAの発現は、そのホスト遺伝子であるMCM7の転写の変化ではなく、マイクロRNA前駆体からの成熟過程の変化により制御されることが明らかになった。(2)正常肝初代培養細胞とヒト乳がん細胞を用いたがん細胞順応機構解析モデルの樹立と解析:「細胞順応」を解析するモデルとして、マウス肝臓より分離した初代培養細胞と、ヒト乳がん手術検体異種移植マウスの腫瘍より分離したがん細胞の共培養系を樹立した。エクソソームは、マイクロRNAを含む分子を細胞間で伝達する因子として注目されている。解析を通じて、肝臓の初代培養細胞の上清より分離したエクソソームは、三次元培養されたヒト乳がん細胞の形態変化を誘導することが明らかになった。したがって、初期転移がん細胞の「細胞順応」に関わる分子機構の一つとして、エクソソームによるマイクロRNAの伝達が関わる可能性が示唆された。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
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