研究実績の概要 |
悪性gliomaは化学療法が最も困難な高致死率の疾患である.近年glioma幹細胞(GSC)の存在が示され,これを標的とした研究とこれまでの治療を融合させた新たな治療の創出が期待されている.本研究は悪性glioma新規分子標的治療薬・診断マーカー創出への基礎情報を得ることを目標にしている。これまでに,悪性glioma患者組織よりglioma幹細胞(GSC)9cloneを樹立し, 独自の融合プロテオミクス法を用いて20,752分子の同定と, GSCの維持と分化に連動して経時的に変動する約1500分子のネットワークプロファイルを行った.さらに、GSCの維持と分化に関与する分子ネットワークの特徴として,分化に伴って変動する分子群の多くにリン酸化と糖鎖の修飾連動が起こっていることに注目し,これらの関連修飾分子とその責任酵素群および関わるネットワークの探索を新規融合フォスフォ/グライコ-プロテオミクス法の確立を介して行った。特に、gliomablastoma患者組織サンプルからのGSCの単離とがん幹細胞評価法による特性解析,GSC分化誘導モデルの確立と最適化、および、GSC/GSC分化誘導腫瘍細胞を用いて, 2D-DIGE 法, iTRAQ法およびDNAアレイ法による融合プロテオミクスを用いたGSCの維持/分化に関わる分子の網羅的同定,さらには、リン酸化-糖鎖修飾分子解析システムを用いた融合フォスフォ/グライコ-プロテオミクス法の確立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にしたがって、GSCの分離とGSC分化誘導モデルの確立,GSCの特異的発現分子群および分化制御分子群の探索・同定は順調に進行している。特に、gliomablastoma患者組織サンプルからのみならず、様々なグリオーマ樹立株からのGSCの単離とがん幹細胞評価法による特性解析,GSC分化誘導モデルを確立した。又、GSC/GSC分化誘導腫瘍細胞を用いて, 2D-DIGE 法, iTRAQ法およびDNAアレイ法による融合プロテオミクスを用いたGSCの維持/分化に関わる分子の網羅的同定は樹立したクローンに関しては終了している。更に、リン酸化-糖鎖修飾分子解析システム(リン酸化特異的分子検出法/レクチンマイクロアレイ法/責任遺伝子qRCRアレイ法/融合型質量分析)を用いた融合フォスフォ/グライコ-プロテオミクス法の確立と, 関わる分子群の網羅的同定・発現・機能プロファイリングも確立した3つのクローンに関して終了している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、1)gliomablastoma患者組織サンプルからのGSCの単離とがん幹細胞評価法による特性解析,GSC分化誘導モデルの確立と最適化 2)GSC/GSC分化誘導腫瘍細胞を用いて, 2D-DIGE 法, iTRAQ法およびDNAアレイ法による融合プロテオミクスを用いたGSCの維持/分化に関わる分子の網羅的同定 3)リン酸化-糖鎖修飾分子解析システム(リン酸化特異的分子検出法/レクチンマイクロアレイ法/責任遺伝子qRCRアレイ法/融合型質量分析)を用いた融合フォスフォ/グライコ-プロテオミクス法の確立と, 関わる分子群の網羅的同定・発現・機能プロファイリング, データ統合による特異的シグナルネットワークの抽出、新規同定分子, 特にリン酸化分子,糖鎖関連分子,これらの責任酵素遺伝子群についてのsiRAN, 4)各種阻害剤等を用いた細胞生物学的/生化学的検討,同定分子の臨床応用への可能性の検討等を行う。
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