研究課題
癌塊中に多数存在する癌内線維芽細胞(Carcinoma-associated fibroblasts: CAFs)は活性化した筋線維芽細胞集団より形成され、多種多様なサイトカインや増殖因子を産生し、血管新生や炎症を促がし癌進展を促進することが知られている。それ故、CAFsは癌治療の標的として考慮されるが、具体的な標的分子を絞り込むことは容易ではない。申請者は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤histone deacetylase (HDAC) inhibitorがCAFs を不活性化することを見出した。CAFs を不活性化することにより、多数の血管新生および炎症促進性のサイトカインや増殖因子の産生を抑制することより、癌微小環境を正常化し、CAFsの癌促進能を抑制することが予期される。申請研究では、HDAC inhibitor によるCAFs の不活性化機構および癌促進能の抑制機構を分子レベルで解明して、CAFsを標的にした癌微小環境の正常化による新規癌治療法の基礎を築きたい。本年度の研究によりHDAC inhibitor処理により再現性をもって線維芽細胞のマーカーであるalpha-smooth muscle actin (a-SMA)の発現が低下することが明らかになり、HDAC の抑制がCAFsの線維芽細胞活性化能を顕著に抑制していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
申請研究では、HDAC inhibitorがCAFsを不活性化することにより、多数の血管新生および炎症促進性のサイトカインや増殖因子の産生を抑制し、結果として癌微小環境を正常化し癌進展を抑制することを予期している。癌微小環境の正常化による新規癌治療法を開発し、癌進展をより効果的に抑制するために、申請研究では、1)HDAC inhibitor によるCAFs の不活性化の分子機構を解明する。2)不活性化されたCAFsの癌増殖・悪性化能抑制の分子機構を調査する。3) CAFsを標的にした癌微小環境の正常化および癌進展抑制を動物モデルにて検証する初年度でのobjectiveである1)HDAC inhibitor によるCAFs の不活性化の分子機構を解明するに関して、CAFsでHDAC1の発現が上昇していることおよびそのシグナルが亢進していることが申請者の実験結果により明らかになった。
TGFbeta signalがCAFsで活性化されていることが従来の申請者の研究により明らかにされている。今回HDACシグナルもCAFs活性化していることが示唆された。今後はCAFsにおけるHDACとTGFbeta signalがクロストークしている可能性を追求する。
HDAC inhibitorがCAFsに与える影響をin vitroで解析するための生化学的データの採取に時間を要した。その為、マウスを使用した実験への移行が遅延した。
本年度は、HDAC inhibitor処理やHDAC-shRNAが導入されたCAFsを乳癌細胞と免疫不全マウスに共移植し、CAFs の転移抑制能がHDACの抑制により抑制さるか否か検討する。
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Oncogene
巻: 11 ページ: 10
BMC Cancer,
巻: 19 ページ: 737
http://ganshien.umin.jp/research/main/orimo/index.html