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2015 年度 実施状況報告書

胃がん腹膜転移におけるエプスタイン・バーウィルス関連Bリンパ腫の役割に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K14389
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

小松 将之  国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, リサーチレジデント (10749500)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード未分化型胃がん / エプスタイン・バーウィルス / Bリンパ腫 / 腹膜播種 / 中皮 / 細胞株 / 食道がん
研究実績の概要

未分化型胃がんは、高頻度に腹膜播種を来たして致死的な癌性腹膜炎へと発展する難治がんである。我々は最近、当該患者の腹水中にエプスタイン・バーウィルス(EBV)感染Bリンパ腫が存在することを発見した。本研究は、上記リンパ腫の特性評価を行うとともに、転移巣における微小環境への役割を解明することを目的としている。本年度は当該リンパ腫の特性評価とがん患者における発生頻度の推定に関して研究を進めた。未分化型胃がん患者の腹水から9症例12株のリンパ腫様細胞株の樹立に成功した。DNAマイクロアレイおよびSNPアレイ解析により、上記細胞株は未分化型胃がんとは異なるmRNA発現プロファイルを有し、ゲノム安定性が高いことを確認した。さらに、細胞免疫染色とゲノムPCRにより、当該細胞株はB細胞マーカであるCD20とEBVの感染を示すEBER1を高発現していることを確認した。当該リンパ腫をマウス腹腔内に移植した結果、リンパ腫を形成すると同時にマウス由来の活性化中皮細胞株を2株樹立した。重要なことに、単独では生存できない胃がん細胞が、上記中皮細胞存在下で安定的に増殖できることを明らかにした。以上は、未分化型胃がん患者の腹腔内では当該リンパ腫が中皮細胞の活性化を介して、腹膜播種した胃がん細胞の生存・増殖を促進することを示唆している。また当該リンパ腫の発生頻度としては、胃がん患者45例の腹水沈査を用いたゲノムPCRによって20症例(44%)においてEBV陽性を確認した。興味深いことに、扁平上皮食道がん患者の手術検体においても、高頻度(24症例中15例)でEBV陽性を認めたことに加え、胸管内リンパ液からもEBV感染Bリンパ腫を2株樹立した。以上から、EBV感染リンパ腫は未分化型胃がんだけに限らず扁平上皮食道がんの原発・転移巣にも存在しており、間質成分への作用を介してがんの進展に寄与することが考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

未分化型胃がんの腹水中に存在するリンパ腫様細胞を新たに樹立するとともに、ゲノム・トランスクリプトーム・免疫染色といった多角的な分析から当該細胞がEBV感染Bリンパ腫であることを証明した。さらに、45例の患者腹水沈渣の分析を行い、EBV陽性例が高頻度で存在することを明らかにした。また付随研究として、当初の計画には無かった扁平上皮食道がんの解析によって、当該リンパ腫が食道がんの原発および転移リンパ節においても高頻度で存在していることを発見した。一方で、リンパ腫により活性化された中皮細胞存在下でのみ生存・増殖可能な胃がん細胞の存在を明らかにすることができたが、共培養系においてリンパ腫ならびに中皮細胞が胃がん細胞に与える影響の評価が完了していない。これは安定発現細胞株を樹立するまでに予想以上に時間を費やしたことが原因である。以上、臨床検体の評価は、新たに追加された扁平上皮食道がんを含めて極めて順調に進行しているのに対し、腫瘍ニッチにおける各細胞の生物学的特性評価は当初予定より遅れていることから、全体としてはやや遅れているに区分した。

今後の研究の推進方策

当該年度までの研究はやや遅れているが、臨床検体の評価に関しては当初予定より前倒しで完了することが予想されるため、今後は共培養細胞の生物学的特性評価に注力して研究を推進する予定である。これと並行してマウスへの細胞混合移植を行い、胃がん・活性化中皮・Bリンパ腫が腹腔内で形成するニッチの解析及び病態の評価を行う。一方で、当初計画していたマウスモデルにおける抗がん剤併用効果に関しては、リツキシマブの腹腔投与による薬効および副作用の評価が前例なく困難であるため、単剤投与の実験へと計画を修正する。また当初の計画には無かった研究として、食道がん患者におけるEBV感染リンパ腫の検索を行う。我々は最近、局所進行性扁平食道がん患者において免疫活性化サブタイプを同定しており、上記サブタイプと当該リンパ腫との関係を調査することは、昨今話題になっている腫瘍免疫療法に対しても新たな方向性を見いだせることが期待される。

次年度使用額が生じた理由

当機関では入札による物品購入が定められているため、ごく少額の次年度使用額が生じる。
ただし、当該年度の交付決定額のほぼ全ては当初の計画通りに使用することができた。

次年度使用額の使用計画

本年度の繰越金額は非常に少額であるため、次年度の物品購入の一部として使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Identification and Characterization of CXCR4-Positive Gastric Cancer Stem Cells2015

    • 著者名/発表者名
      Fujita T, Komatsu M, et al
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 6 ページ: 1-19

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0130808

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Discovery of a Good Responder Subtype of Esophageal Squamous Cell Carcinoma with Cytotoxic T-Lymphocyte Signatures Activated by Chemoradiotherapy.2015

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Y, Komatsu M, et al
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 12 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0143804

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Implications of epithelial-mesenchymal transition in gastric cancer2015

    • 著者名/発表者名
      Tanabe S, Komatsu M, et al
    • 雑誌名

      Translational Gastrointestinal Cancer

      巻: 4 ページ: 258-264

    • DOI

      0.3978/j.issn.2224-4778.2015.07.04

    • 査読あり
  • [学会発表] Discovery of a chemoradiotherapy-sensitive subtype of esophageal squamous cell carcinomas with high tumor immunity2015

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komatsu
    • 学会等名
      The 74th Annual Meeting of the Japanese Cancer Association
    • 発表場所
      Nagoya
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-08

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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