現在、日本では1日あたり100人以上の大腸がん患者が死亡し、2020年には、大腸がんは、日本人が最も多く罹患する悪性腫瘍になることが予想されている。進行大腸がんは、既存の古典的な化学療法薬に抵抗性を示し、治療困難となることが多い。現在、新機軸の大腸がん治療薬の開発が盛んに行われ、さまざまな「大腸がんマウスモデル」がその開発に重要な役割を果たしてきた。しかしながら、現在、使用されている「大腸がんマウスモデル」は、小腸病変が大部分で、大腸病変は僅かしか発生しないという大きな問題点が存在する。本研究計画では、この問題を解決するため、大腸に再現性よく腫瘍を発生するマウスモデルの作出を目指した。 本研究計画では、小腸と大腸の幹細胞の差異に着目したて、大腸の幹細胞で高発現している遺伝子に焦点を当てた。まず自身のApc変異マウス小腸ポリープと大腸ポリープのDNAマイクロアレイデータおよび公共データベースのアレイデータを組み合わせて解析して、大腸上皮幹細胞で高発現している可能性高い27個の遺伝子を絞り込んだ。次に定量的PCRを実施して、Aqp4とShisa2が大腸で高発現していることを確認した。またレーザーマイクロダイセクションで上皮と間質成分を区分して、定量的PCRを行ったところともAqp4、Shisa2ともに上皮成分で高発現を認めた。文献的検討なども加え、Aqp4プロモーター下流にタモキシフェン誘導クレリコンビナーゼ(CreER)を導入したトランスジェニックマウスの作出を目指して、BACクローンを購入して、その遺伝子改変を開始した。現在、その遺伝子改変作業を進めている。
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