研究課題/領域番号 |
15K14393
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
高橋 真美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (90214973)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵臓がん / 動物モデル / 宿主環境要因 / 悪性化 |
研究実績の概要 |
膵臓特異的にK-ras変異体を発現させるPtfla(Cre/+)/LSL-K-ras(G12D/+)マウスを繁殖させ、得られた膵臓腫瘍組織から細胞培養を行い、培養細胞株を樹立した。また、一部の腫瘍組織は、直接シャーレで培養せず、C57BL/6Jマウスの皮下に移植し、移植株およびオリジナル腫瘍の病理組織像を比較し、同様な形態が維持されているかを調べて、数回継代移植してから培養した。樹立できた細胞株はサブクローン化し、C57BL/6Jマウスの皮下に移植して腫瘍形成能及びその組織型を調べた。低分化/未分化がんからは培養した全例から細胞株を樹立出来たが、高/中分化型がんから樹立出来たのは20例中13例であった。そのうちC57BL/6Jマウスの皮下に移植して腫瘍が増大したものは6株で、残り7株は、一旦小さい腫瘍を形成したが、1週間~2週間で退縮した。また、形成された皮下腫瘍の組織型は元の腫瘍に似ている場合が多かったが、元々の腫瘍も組織が均一ではなく、高分化型の部分と低分化型の部分が混在しているものが多いので、同一の腫瘍から樹立された培養細胞でもクローンによって組織型が異なるものが見られた。樹立された細胞株を肥満モデルのAyマウスとそのWTマウスの皮下に移植して腫瘍増殖の違いを検討した結果、Ayマウスでの増殖が促進される細胞株とWTマウスと変わらない細胞株の2つに分かれた。Ayマウスで増殖が低下する細胞株はなかった。Ayマウスでの増殖が促進される細胞株は高/中分化型に多く見られた。高/中分化型の腫瘍組織では間質の量が低分化/未分化型よりも多く、がん細胞と間質細胞との相互作用によって腫瘍の増殖が促進されている可能性が考えられた。現在、その促進要因について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
良性腫瘍からの移植株細・胞株樹立は成功していないが、高分化型がんからの細胞株樹立は順調に進んでいる。がん関連遺伝子の変異の有無の解析等が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も、平成27年度に引き続き膵臓病変組織の移植・継代を行ない,良性腫瘍からの移植株樹立を目指す。また、樹立できた細胞株に関して,平成27年度は肥満モデルのAyマウスにおける増殖の検討は行ったが、平成28年度は高脂肪食やニコチン、膵炎誘導剤のセルレイン等を投与したC57BL/6Jマウスにおける腫瘍の増殖・進展や遺伝子発現等に及ぼす影響を検討する。また、C57BL/6Jマウスで一旦皮下腫瘍を形成したのちに退縮してしまう細胞株が複数あることから、それらの細胞株を免疫不全マウスに移植した場合の腫瘍の増殖・進展についても検討する。腫瘍の増殖促進・悪性化要因を見出し、その悪性化モデルを用いて抗炎症剤や抗高脂血症剤、糖尿病薬等の膵がん予防候補薬の腫瘍悪性化抑制効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Ptfla(Cre/+)/LSL-K-ras(G12D/+)マウスにおける膵臓腫瘍の発生頻度が低く、多くの細胞株を樹立するのに時間がかかったことから、培養細胞の遺伝子解析等がやや遅れ、予定より支出が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、平成27年度に樹立された細胞株のがん関連遺伝子の変異検出のためのシークエンス解析等を行う。また、樹立された高分化型膵がん細胞株を移植したマウスに高脂肪食やニコチン、セルレイン等を投与して腫瘍増殖・進展への影響や薬剤によるその抑制について検討する予定であり、動物・試薬の購の入費用や人件費にかなりの費用が必要となることから、これらの研究計画の完遂のために繰り越し分を充てる計画である。
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