研究課題/領域番号 |
15K14393
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
高橋 真美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (90214973)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵臓がん / 動物モデル / 宿主環境要因 / 悪性化 |
研究実績の概要 |
膵臓特異的にK-ras変異体を発現させるPtfla(Cre/+)/LSL-K-ras(G12D/+)マウスを繁殖させ、得られた膵臓腫瘍組織から細胞培養を行い、培養細胞株を樹立した。高/中分化型がん由来の細胞株を肥満モデルAyマウス(アグーチを全身で高発現する)とWTマウスの皮下に移植して腫瘍の増殖を比較すると、2つの細胞株でAyマウスにおいて増殖促進が見られた。また、一番差が見られた細胞株をマウスの膵臓に同所移植すると、同様にAyマウスで増殖促進が見られた。この同所移植では、腫瘍内に顕著な脂肪浸潤が見られ、内臓脂肪への播種も観察された。皮下腫瘍、膵臓腫瘍と、同所移植したマウスの腹部内臓脂肪からRNAを抽出し、Agilentのアレイ解析を行った。さらに、Ayマウスで共通して発現が高い遺伝子を抽出し、リアルタイムPCRを行った。その結果、SAA3,MMP12,F4/80遺伝子の発現がAyの脂肪組織や腫瘍で上昇していた。これらは、炎症、マクロファージで発現していることが知られている。アグーチの高発現は内臓脂肪を蓄積させ、マクロファージを呼び寄せて活性化させると考えられる。これら由来のアディポカイン、サイトカインや、腫瘍内に浸潤した脂肪細胞やマクロファージが腫瘍増殖を促進する可能性が示唆された。 高/中分化型がん由来の細胞株のうち7株は、一旦小さい腫瘍を形成したが、1週間~2週間で退縮してしまうことから、現在、免疫不全マウスに移植した場合の腫瘍の増殖・進展について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵臓発がんマウスモデルの膵臓病変から多数の移植株・培養細胞株を樹立するのに時間を要した。しかしながら、当初目標とした良性腫瘍の移植株・細胞株の樹立は成功せず、複数の分化型がんの樹立株を用いて解析を行っている。これらには宿主環境による影響を受ける細胞株と受けない細胞株があることが明らかとなり、解析に適した細胞株を絞り込むのにも時間を要したため、高脂肪食投与等の実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
樹立できた細胞株に関して、平成29年度は高脂肪食を投与したC57BL/6Jマウスにおける腫瘍の増殖・進展や遺伝子発現等を検討する。また、C57BL/6Jマウスで一旦皮下腫瘍を形成したのちに退縮してしまう細胞株が複数あることから、それらの細胞株を免疫不全マウスに移植した場合の腫瘍の増殖・進展についても検討する。腫瘍の増殖促進・悪性化要因を見出し、その悪性化モデルを用いて抗炎症剤や抗高脂血症剤、糖尿病薬等の膵がん予防候補薬の腫瘍悪性化抑制効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
宿主環境による影響を受ける細胞株の絞り込みに時間がかかり、高脂肪食投与等の実験が遅れ、研究期間の延長が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、樹立された分化型膵がん細胞株を移植したマウスに高脂肪食を投与して腫瘍増殖・進展への影響や薬剤によるその抑制について検討する予定であり、動物・試薬の購入費用にかなりの費用が必要となることから、これらの研究計画の完遂のために繰り越し分を充てる計画である。
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