乳がんの60~70%は、エストロゲンが、その発症や進展に重要な役割を担っている。これまでエストロゲンと遺伝性乳がん原因遺伝子BRCA2との関連性は、全く明らかにされていない。我々は、乳がん細胞にエストロゲンを添加した時、本来核内に発現するBRCA2 が細胞内全体にその局在を変化させることを見出した。そこで、本研究では、乳がん細胞に対するエストロゲンの曝露がBRCA2 の局在に及ぼす影響を詳細に解析し、そのメカニズムとBRCA2 の局在変化が細胞に与える影響を明らかにして、これまで全く知られていなかった乳がん発生過程におけるエストロゲンとBRCA2 の機能的相互作用を見出し、解析する。 BRCA2の細胞周期依存的な発現制御は、USF、Elf1およびNF-κB転写因子のBRCA2プロモーターへの結合に関連する。最近の研究では、BRCA2の発現は、転写因子Sp1がエストロゲン-エストロゲン受容体(ER)活性に応答してBRCA2プロモーターへ結合することにより間接的に上昇することが報告されている。 BRCA2プロモーターには、-462から+1bpまでの8つの既知のSp1部位があるが、BRCA2遺伝子転写を調節する上でのこれらのSp1部位の潜在的役割は依然として不明である。本研究では、部位特異的変異誘発法を用いたSp1、NF-κB、およびUSF結合部位の変異をプロモータールシフェラーゼベクターに導入し、MCF7細胞におけるエストラジオール誘発BRCA2プロモーター活性およびBRCA2タンパク量を調べた。我々は、エストラジオール-ER複合体活性に応答する2つのSp1部位(-50~-55および-69~-75)を確認した。さらに、エストラジオール-ERによるBRCA2転写のメカニズムおよびエストラジオール誘発BRCA2の機能解析を進めている。
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