研究課題
癌患者の予後は依然不良であり、その改善のためには多方面から癌医療を改善する必要がある。Imaging Mass-spectrometry (MS)は、組織切片内の各局在部位(ピクセル)での標的分子を質量分析器を用いて網羅的に定量し、それを「可視化」することができる最新の工学的technologyである。Imaging MSを癌領域で利用することで、癌医療を大きく改善できる可能性がある。本研究の目的は、Imaging MSを用いて、抗癌剤の効果を可視化し、それによって①抗癌剤のPOC(Proof of Concept)の獲得、②新たな抗癌剤効果判定方法の開発、③抗癌剤投与後生き残る細胞の分子レベルでの特徴の解明の3つを達成することである。申請者らは本研究の中で、Imaging MSを用いて、抗癌剤が癌細胞の微小環境、代謝に与える影響を評価した(マウスモデル)。その中で、血管新生阻害薬に注目し、それらが癌細胞の微小環境および代謝に与える影響を明らかにした。面白いことに同じ血管新生阻害薬に分類される抗癌剤でも薬剤ごとに微小環境あるいは代謝に与える影響は異なっていた。本研究は血管新生阻害薬がどのようにして効果を発揮するのかを可視化することに成功した初めての研究であると思われる。本研究結果をもとに、より有効な血管新生阻害薬の使用が可能になることが考えられ、臨床に還元しうる知見であると考えている。また研究の中でヒト肺癌検体を用いて癌組織由来の代謝因子が定量できることを確認した。将来的にヒトの癌組織で抗癌剤の効果を評価するなどの研究につなげていきたい。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Cancer Research
巻: 77(8) ページ: 2078-2089
10.1158/0008-5472.CAN-16-2359
Molecular Cancer Research
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