研究課題/領域番号 |
15K14399
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
蟹江 治 東海大学, 糖鎖科学研究所, 教授 (90291062)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マクロファージ活性化因子 / αガラクトサミニダーゼ / 酵素阻害剤 |
研究実績の概要 |
Gcプロテインは糖鎖修飾されたタンパク質であり、マクロファージの活性化に関与している。このタンパク質のマクロファージ活性型はGcMAFとよばれ、O-結合型α-GalNAcを有している。がん患者においては免疫機能の低下がみられ、GcMAFの投与によって改善されるが、効果が持続しないことも報告されている。本年度は、がん患者の血中でα-GalNAcを切断するNアセチルガラクトサミニダーゼ(α-GalNAc-ase)の活性上昇が報告されていることに着目し、がん由来細胞株におけるα-GalNAc-aseの活性について検討した。具体的には、ヒト肝がん由来株化細胞の酵素活性を調べ、さらに有機合成したα-GalNAc-ase阻害剤の効果を検討した。 ヒト肝がん由来株化細胞HepG2とヒト子宮頸がん由来株化細胞HeLaの培養外液と細胞からタンパク質を抽出し、それぞれにPNP-α-GalNAc(最終濃度1 mM)を基質として加え37 ˚Cで1時間反応した。この後タンパク質を変性し除去した。遊離したPNPを定量してα-GalNAc-ase活性とした。 この結果、HepG2はHeLaに比べてα-GalNAc-aseは40倍の活性を示した。培養外液においてはいずれも検出限界以下であった。このことからHepG2は細胞内小器官内に酵素を有していることが推察された。一方、試験管内での鶏の肝臓から得られたα-GalNAc-aseに対するα-GalNAc-ase阻害剤による阻害剤実験では、nMオーダーの阻害活性を確認したのでHepG2の酵素に対する効果も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は提案時計画では阻害剤の委託合成を行う予定であったが、企業との協議の結果不可能となった。このため、急遽少量を合成、調製し、その後の培養細胞実験での検討に使用することとし研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度がん細胞由来の細胞株におけるGcMAF破壊酵素の活性を見出したので、この培養細胞系を指標として、GcMAF破壊酵素阻害剤の効果を調べる。合成した阻害剤量は動物実験に十分ではない可能性がある。その場合には分子レベルでの基礎実験を通じて十分なデータを取得しGcMAFが破壊されないことによる、新しいがん治療の基礎とする予定である。また、GcMAFの前駆体であるGcグロブリンの糖鎖構造をプロテオミクスの手法によって解析し、酵素による破壊と活性との関係を分子レベルで明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
挑戦的萌芽研究の初年度の研究であり、想定していた研究成果の発表に至らなかった。このため申請していた旅費経費が発生しなかった。このほかにも微弱ながらの試薬などの購入において輸入品の価格設定変更などの影響によりそう定額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には国内外学会での発表を予定しており旅費については2年間で計画通りとなる予定である。また、海外から購入する糖タンパク製剤の構造解析を進めるために初年度の差分である約10万円を有効利用する予定である。
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