糖タンパク質であるGcプロテインは、O-結合型糖鎖の切断状況により一過性に機能体としてマクロファージ活性化因子(GcMAF)となる。単糖(αGalNAc)が結合したGcMAFの血中での安定化により、がんに対する免疫応答の維持を期待できるため、αGalNAc分解酵素(αGalNAc-ase)阻害による新しい免疫調節抗がん治療を期待し研究を行った。 合成したαGalNAc-ase阻害剤を用いて、ヒト肝がん由来株化細胞HepG2から抽出した粗酵素に対する阻害研究を行った結果、HepG2細胞において本酵素の活性(43nmol/mg/h)が認められ、これに対してIC50=230nMの阻害を確認した。この結果は、昨年既に得ていた鶏由来のαGalNAc-ase阻害結果によく一致し、本阻害剤が種を超えて広くαGalNAc-aseに対して阻害効果を有することを示している。また、ヒトのαGalNAc-aseに対して良好な阻害効果が認められたことから、GcMAFの効果持続性改善に期待できる結果であると考えられる。 一方、αGalNAc-aseの細胞外液への放出は認められず、文献情報と異なる結果も得られた。がん組織においては、細胞が限定された空間で増殖し、細胞膜などに物理的に大きなストレスがかかると考えられ、一般的には放出されないαGalNAc-aseがリークし、これによってGcMAFの破壊が起こる可能性が示唆された。マウスを用いた研究においては、系統によってαGalNAc-aseの血中活性が異なる結果を得た。がんを引き起こしやすい系統において高いαGalNAc-aseの活性が観察されたことは、非常に興味深い。 最後に、入手可能なGcMAFの糖鎖構造について、質量分析装置を用いて解析した。この結果、微量ではあるもののαGalNAcが結合したGcMAFが確かに存在することを確認した。
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