研究課題
我々は、次世代シーケンサーの特性を生かし①in silicoの新生抗原予測法と、②T細胞受容体(TCR)遺伝子解析に基づいた抗原特異的T細胞の同定法を確立し、新生抗原特異的抗腫瘍免疫応答を解明することを目的として本研究を実施した。平成27年度は、次世代シーケンサーを用いたTCR遺伝子配列の解析技術と、腫瘍特異的新生抗原同定システムの基盤を確立した。最終年度(平成28年度)は、エクソームシーケンスに加えて、全RNAシーケンスのデータから変異遺伝子の発現量と変異アレルを確認するステップを加えることにより、より正確に新生抗原を予測することが可能になることを明らかにした(Cancer Sci. 2017 Feb;108(2):170-177)。これにより正確に新生抗原ペプチドを合成することが可能になり、新生抗原特異的T細胞の検出の促進が期待された。さらに最終年度は、次世代シーケンサーを用いたTCR遺伝子解析を応用し、抗原特異的T細胞遺伝子同定システムを構築した。TCR遺伝子配列が既知のpmel-1トランスジェニックマウス由来のT細胞をC57BL/6マウスの脾細胞に0.0001%~1%混入し、抗原ペプチドで72時間刺激培養したのちに、TCR遺伝子解析法とフローサイトメーターによる抗原特異的T細胞の検出を比較した。通常のフローサイトメーターによる測定では、検出限界は0.01%~0.1%であるが、我々が開発したTCR遺伝子解析法では、0.0001~0.001%の抗原特異的T細胞が検出可能であった。これらの技術を統合して、次世代シーケンサーを活用した新生抗原と特異的T細胞同定システムを構築することができた。これにより、新生抗原を標的とした抗腫瘍免疫応答の研究と治療法の開発か可能になると期待される。
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Cancer Sci.
巻: 108 ページ: 170-177
10.1111/cas.13131.
http://immunoth.umin.jp/