固形癌患者の遺伝情報(一塩基多型:single nucleotide polymorphism(SNP)等の遺伝素因を含む)に基づく癌の分子病態解析研究で同定された癌関連遺伝子の発現制御や機能検証に必要となる複数の遺伝子変化やゲノム構造異常について、緻密かつ包括的にヒト細胞や組織を用いた系で分子シグナル及び細胞動態レベルで検証し、創薬開発に応用できる手法を確立するにはさらなる技術改良・革新が求められる。そこで(1)遺伝子発現・機能異常の解析に利用可能な遺伝子導入、制御技術を開発・発展させて、ゲノム構造異常や遺伝子多型(遺伝素因)と他の遺伝子異常及び外的要因(環境因子)に起因する癌発生機構の解明を行うこと、そして(2)この技術により複数の癌関連遺伝子の分子動態を制御する医薬品の創薬開発モデルを構築することを目的とした解析基盤の構築を行った。平成29年度は、前年度に引き続き、複数の癌関連遺伝子候補について、複数のヒト細胞株および多数の癌組織での分子発現検出を行い、構築したヒト細胞株での発現制御系における表現型(細胞形態、増殖能、細胞動態、細胞死等)と分子経路の変化を各種の画像解析(蛍光免疫染色、イメージング、コロニーアッセイ等)と分子生物学的解析(オミックス解析等)を通じて明らかすることにより、癌関連遺伝子とその遺伝子産物の細胞・分子レベルでの動態と発癌環境暴露を介した複数の固形癌の発症機構の解明及び今後の創薬基盤アッセイ系の構築を実施した。
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