研究課題
細胞ががん化すると細胞表面の糖鎖が変化することは、よく知られている。コアフコースはフコース転移酵素(Fut8)により生合成され、肝癌の特異的バイオマーカーや抗体医療とも深く関わっており、注目されている糖鎖の一つである。我々は、化学誘導性肝がんの実験モデルマウスを用いて、肝がん形成におけるコアフコースの機能を調べた。その結果、野生型に比べてFut8欠損マウスの肝がん形成が著しく低下していた。最近、我々はフコシル化反応に重要であるGDP-fucoseの生合成に抑制的に働く小化合物を用いて、コアフコシル化の変化と細胞機能を検討した。興味深いことに、肝癌や大腸癌細胞をその化合物で処理すると、細胞のコアフコシル化発現レベルが劇的に抑制され、細胞増殖や細胞移動も有意に低下した。現在、その分子メカニズムを詳しく解析している。
2: おおむね順調に進展している
がんを制すコアフコース糖鎖という主旨で研究を展開している。先ず、コアフコースは、化学誘導性肝がんの実験モデルマウスにおいて重要な役割を担うことを示している。次にコアフコシル化を抑制できる化合物を用いて、がん細胞の増殖と移動におけるコアフコースの重要性が確認された。
コアフコース発現の有無で細胞増殖や腫瘍形成能を検討するとともに、Fut8の標的分子の同定とその機能解析を行う。特にがん細胞の増殖や浸潤転移と深く関わる増殖因子受容体や接着分子の活性化とFut8の発現との関連性に注目し解析する。
本実験では、肝がん、肺がん、膵がんと大腸がんの4種の固形癌細胞およびがんモデルマウスに注目して解析している。実験の結果と都合を勘案して、費用を多くかかる動物実験は、次年度に行うため、次年度使用額が生じた。
主に以下の3点に関して検討する。1)化合物でフコシル化を低下させたがん細胞の腫瘍形成能を検討する。2)化学誘導性大腸がんの実験モデルを用いてコアフコースの発現調節とその意義を検討する。3)コアフコースの修飾と標的分子の機能解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.tohoku-mpu.ac.jp/laboratory/drg/index.html