研究課題/領域番号 |
15K14416
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
益谷 美都子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (60238904)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線増感 / 網羅的探索 / ガンマ線 / PARP阻害剤 / 陽子線 |
研究実績の概要 |
がんに対する放射線療法は放射線により細胞のDNAを破壊する作用を利用し、がん組織に集中的に放射線を照射することでがん細胞を死滅させる治療法である。放射線療法は体外からの局所的な治療が可能なため侵襲性が低く、高齢化社会に向けて応用の展開が期待されている。新規の放射線増感の標的を同定し、放射線増感剤の開発を検討するために網羅的な放射線増感因子の探索をレンチウイルスshRNAライブラリーを用いたマイクロアレイ解析により行っている。放射線感受性に影響を与える候補遺伝子の評価を進めた。この探索においてpoly(ADP-ribose) polymerase1 (PARP-1)、interleukin 27 receptor, alpha (IL27RA)、APOBEC3GのshRNAが抽出された。PARP-1は既知の放射線増感標的であり、DNA修復応答に関与する。PARP阻害剤はガンマ線のみならず、臨床応用が拡大されつつある陽子線治療に対しても有効であることをがん細胞株を用いて認めた。IL27RAの発現抑制によって肺がん由来A549細胞においてガンマ線に対する増感効果が誘導された。IL27RAの発現抑制は他のサイトカインの発現誘導に大きく影響を与えることが分かった。一方で正常ヒト線維芽細胞であるWI38細胞ではIL27RAの発現抑制では放射線増感は誘導されなかった。IL27RA、APOBEC3G発現阻害による放射線増感の機構について、さらに検討を加えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線感受性に影響を与える候補遺伝子が網羅的探索系により、複数抽出され、そのそれぞれの機構を十分に解析するために時間がかかっており、H29年度に繰越をして研究を継続することにした。
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今後の研究の推進方策 |
放射線感受性に影響を与える候補遺伝子が網羅的探索系により、複数抽出され、そのそれぞれの機構を解析し、有望な候補遺伝子については臨床的意義を検討し、その阻害剤の開発研究へと導出の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではがんの放射線治療への応用に有効な複数の放射線増感候補遺伝子を選定した。その増感機構が複雑であるために、増感機構の解析に想定以上の時間を要しており、来年度にかけて研究期間を延長し解析を行い、論文投稿に十分な時間を確保することが必要であるため、延長を申請した。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で選定したがんの放射線治療に有効な複数の放射線増感候補遺伝子について、その増感機構を分子レベルで解析し、論文作成の準備を進める。
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